2年目となるフォーミュラE 2015-16シーズン、第2戦プトラジャヤ大会(マレーシア)でテレビ解説を担当したレーシングカーデザイナー由良拓也氏がレースを振り返り、12月19日(土)の第3戦プンタ・デル・エステ大会(ウルグアイ)のみどころを語った。
■第2戦はアクシデントが多かった
由良:アクシデントとトラブルが多かったですね。電気系の中でも特にコンピューターやバッテリーは熱を発するものなので、気温が34度となるときつくなるんです。リミットを越えて、いろいろなエラーが出たということが想像できます。
基本的にコンピューター系の直し方は、電源を強制的に終了させてもう一度立ち上げる。そうすると、固まっていたものが意外と動くじゃないですか。初期的なトラブルは再起動が最大のメンテナンスなので。それを皆がやっていました。
■優勝したルーカス・ディ・グラッシの良かった点は?
由良:(セバスチャン)ブエミとポール争いをしているときに、ブエミよりもいいタイムで来ていながら、セクター3のゴールの前でウォールにヒットしてタイムを失って6番手に落ちたんです。でも、ちゃんと走ったら、ディ・グラッシがポールだなと思うぐらい速かったんですね。だから、6番手でもマシントラブルとかクラッシュに巻き込まれず、うまく展開できたので、あの1位は順当なところですね。
■2位にはサム・バードが入った
由良:プトラジャヤに縁があるというか、彼は(運を)持っていますね。あのサーキットは走り慣れているのでしょう。去年もぶっちぎりましたから。そういう意味で相性が良かったことと、コンスタントにトラブルなく走れた。さらに上位以下の大混戦に巻き込まれずに気が付いたら2位、みたいな巧みなレースを見せてくれました。
■コース上の落ち葉の影響は?
由良:実は枯れ葉は砂よりも怖い。というのも、枯れ葉は平べったいので、ラジエーターの中に入ってしまうと張り付いて風が流れなくなり温度が上がってしまうんです。それでバッテリー温度を上げてしまったチームもあると思います。
■ルノーについて
由良:トップに立っていると、コース上のゴミなどを避けて走れますよね。競り合っているとコースを選べないですが、トップは冷静に走れる。そういう意味ではコントロール出来ているはずなのに、トラブりましたよね。本命がそのまま行くと思っていたのでびっくりしました。
昨年は完走率が高くて完成されているなという印象でした。今年はパワープラントが自由化された。そうやっていじり始めると、人より速く走るためにギリギリのところまでいきますよね。そうすると、こんなにトラブルが多くなるのかなと。去年のマレーシアではこんなにはトラブらなかったですよね。そう考えると、EVをギリギリまで持っていくと、温度という壁にぶつかるのかなと思います。
■A.ダ・コスタは去年と同じマシンで6位
由良:彼はフリー走行も速かったし、予選も上位にいて、レースもしっかりと前半は2位を走っていました。そういう意味では暑い中で、去年の完成されたマシンを使うことがアドバンテージになったのかな、と思います。他のチームが熱で苦しんでいる中、彼は去年のデータで走れるわけですから。そういう意味でドライバーはドライビングに集中できた、ということもあるし、ダ・コスタも慣れていたのでいいレースが出来ました。
■初代チャンピオン、ネルソン・ピケJr.の不調の原因は?
由良:今年からパワープラントが自由になったことで、みんながそれぞれの思い入れで一番というマシンを開発してきました。その中でツインモーターを選んだネクストEV TCRですが、単純に走りを見ている限り、パワーは使えているが、重量バランスが重くなってテールヘビー、後ろ側が重くなっている印象を受けます。マシンがコントローラブルじゃないというか。ピケJr.のようにドライビングの名手にしても乗りにくそうにしています。車が進入で向きを変えて加速に移る動作がスムーズじゃないんです。あれではタイムは出ない。有り余るパワーを速さにつなげる時間が必要かなと思います。
■第3戦はウルグアイのプンタ・デル・エステ
由良:マレーシアは34、5度の中でしたから、去年と同じで10度低いとなると、ギリギリのところよりは下のはず。いいレースができるんじゃないかと思います。
ここが気温的に一番のピークだとしたら、これからは暑いとはいえ楽になるので。レースはやりやすいのではないでしょうか。さらに強いチームは今回のことを学習しているはずですから、次に備えてくるでしょう。そのほかのチームも今回のレースみたいに「一矢を報いよう、なんとか上位に食い込むぞ」と挑んでくれば、面白いレースが見られると思います。