昨年までレッドブルに所属していたマーク・ウェバーが、今のF1の方向性に懸念を感じていると語った。
今季からF1は新たなV6ターボ時代に入ったが、それを前に、ウェバーは昨シーズン限りでF1を引退。今年はだんだん人気の高まりを見せているWEC(世界耐久選手権)にポルシェから参戦している。
2002年にF1デビューし、昨年まで12年間にわたって活躍を続けていた38歳のウェバーは、オーストリアの『Salzburger Nachrichten(ザルツブルガー・ナッハリヒテン)』から今季のF1についての質問を受けると、次のように答えた。
「今のF1にはほかにもっと大事なことがあると言うべきだろうね」
「僕は今の状況について言っているんだ。スポーツ全体の発展についてね」
F1が現在非常に混乱した時期を迎えているのは事実だ。ケータハムとマルシャは経営破たんに至り、残った小規模チームも生き残るための収入増を求めてボイコットも辞さないというような抗議行動に出るまでに至っている。
■F1は急激に変化し過ぎた
ウェバーはさらに、F1が今年あまりにも急激に新しいルールを導入し過ぎたのではないかと次のように続けた。
「キミ(ライコネン/フェラーリ)を見てごらんよ。これはレースじゃないね。もし限界までハードに攻めることができるようなクルマに乗っていれば、彼もそういう活躍ができたはずだ。あまりにも急ぎ過ぎたんじゃないかな」
ウェバーは、ライコネンがフェラーリのチームメートであるフェルナンド・アロンソに比べ、今季著しく精彩を欠いたことに触れながら次のように付け加えた。
「彼は本当にいら立っているよ」
「さらに」とウェバーは続けた。「バーニー・エクレストン(F1最高責任者)がF1には若い観客は必要ないんだと言っていることについてもすごく興味深く思っている」
■今のF1にはかつての姿はない
だが、一方でF1は来季17歳のルーキードライバー、マックス・フェルスタッペンがトロロッソからデビューすることになっている。そのことについてウェバーは次のように語った。
「みんなが400ユーロ(約59,000円)も払って17歳の少年を見にきたいと思うかどうかは分からないね」
「以前もそういうこと(若いドライバーのデビュー)はあった。フェルナンドやキミのようにね。でもそれは非常に特別なケースだったし、あの当時のクルマは今よりももっと運転が難しかったよ。特に体力的に厳しかったし、トラブルを起こす確率だってもっと高かったんだ」
「今のF1カーがピットから出てくるのを見ると気恥ずかしいほどだね。ほんのちょっとGP2(下位カテゴリー)より速いだけだし、これまで僕たちが見てきたF1ではなくなっているよ」
それゆえ、ウェバーは最高峰フォーミュラカーシリーズであるF1を去ったことについて、特にさびしさを覚えたりもしていないと次のように続けた。
■近年のルール変更やペイドライバーの台頭がファン離れにつながる
「テレビでレース全体を最後に見たのは、もう2、3か月前のことになるかな」
「ブラジル(第18戦)の後で、僕はクルマの中でラジオを聞いていたんだ。そこで話されていたことの85パーセントがタイヤに関することだったよ。これではドライバーたちばかりでなく、ファンにとってもイライラが募るよね」
「DRS(可変リアウイング)もみっともないね」とウェバーは続けた。「2000年台中盤とはすごく違ってきている。最近の3、4年の間に行われた変更はファンにとっては面白いものではなかったんじゃないかと思っているよ」
ウェバーの舌はさらに加速度を増してきたようだ。
「4回ピットストップ? なぜそんな必要があるんだい?」
「それにペイドライバーたちが増えたこともそうだ。F1は最高レベルのドライバーで構成されていなくてはダメなんだ」
そう語ったウェバーは、次のように付け加えた。
「ところが、本来F1にいてもおかしくない連中が、1日のテストに参加するために必要な40万ユーロ(約5,900万円)を工面することさえできない状態なんだからね」