小林可夢偉(ケータハム)やエイドリアン・スーティル(ザウバー)にとっては、2016年からF1に新規参戦を予定しているハースF1チームが、F1ドライバーの座をキープするための命綱となるかもしれない。
最近、ザウバーは来季のドライバーとして今季ケータハムからデビューしていたマーカス・エリクソンと契約を行ったことを発表。さらに、来季そのチームメートとなるのは、現在ザウバーでリザーブドライバーを務めるオランダ人ドライバーのギド・ヴァン・デル・ガルデだと見られている。くしくも、ヴァン・デル・ガルデも昨年はケータハムに所属していたドライバーだ。
■短期的に資金が必要なザウバー。契約もなりふりかまわず
ケータハムが破産手続きに入り、F1アメリカGP(第17戦)への出走ができなくなったが、エリクソンのマネジャーはその後すぐに来季のザウバーのシートを獲得するという早業を見せた。
『Speedweek(スピードウィーク)』によれば、スウェーデン人ドライバーであるエリクソンのスポンサーは、今回の契約を進めるためにザウバーに対して1,200万ドル(約13億6,000万円)の前払いを行ったという。ケータハムやマルシャ同様にチームの存続が危ぶまれるザウバーにとってはこのエリクソンとの契約は生き残るための重要なカギとなるものだったようだ。
『Speedweek(スピードウィーク)』はさらに、400万ドル(約4億5千万円)ずつがこのあと支払われることになっているとも報じている。
オランダの『Algemeen Dagblad(アルゲメン・ダグブラッド)』は、そのエリクソンのチームメートとなるのはヴァン・デル・ガルデだろうとしている。ヴァン・デル・ガルデには有名なファッションブランドであるマグレガ-がスポンサーとしてついており、このエリクソンとヴァン・デル・ガルデとの契約により、ザウバーもしばらくの間は生き延びることができそうだとされている。
まだそれに関する正式発表はされていないものの、ヴァン・デル・ガルデはオランダの『De Telegraaf(テレグラーフ)』に次のように語った。
「チームから金曜日(10月31日)に、エリクソンが加わるということを伝えられたんだ」
「その理由は、ザウバーでは短期的に資金が必要だからだということだった。さらに、僕にとってもチャンスがありそうだと言われたよ。でも、もう少し待つ必要があるけれどね」
スーティルは、これまで一貫して2015年までザウバーとの契約があると主張してきていた。だが、どうやらエリクソンとヴァン・デル・ガルデのスポンサーが、スーティルとの契約違約金の資金もねん出することになりそうだ。
先週末のアメリカGP決勝後に、突然将来の見通しが怪しくなってきたことに対して質問を受けたスーティルは、ドイツのテレビ局『RTL』に次のように語った。
「最初から僕には明確な契約がある。だから様子をみないとならないよ」
「いろんなうわさがささやかれているけれど、今季のレースもまだ残っているし、それに集中する必要があるからね」
■経験あるドライバーを望む2016年参戦のハースF1チーム
ケータハムの撤退がほぼ確実視される中、シートを失った可夢偉や、あるいは今後契約を解除されることになるかもしれないスーティルにとっては、2016年まで待たなければならないものの、アメリカのノースカロライナに本拠を構え、フェラーリとの連携のもとにF1参戦準備を進めているジーン・ハース率いるハースF1チームが命綱となるかもしれない。
2016年シーズンのドライバーに関して質問を受けたハースF1チームの責任者ギュンター・シュタイナーは、『Speedweek(スピードウィーク)』に対し、必ずしもアメリカ人ドライバーを最初から乗せる必要はないとの考えを示し、次のように語った。
「我々は新しいチームだし、大きなリスクを負うことは避けたいんだ」
「もし素晴らしいアメリカ人ドライバーがいれば、乗せたいと思う。でも、彼がルーキーで、F1経験がないとしたら、我々としては経験のあるドライバーも欲しいところだ」
そう語ったシュタイナーは、次のように付け加えた。
「今は具体的な候補者がいるわけじゃない。だが、ザウバーがドライバー体制を変えるとすれば、エイドリアン・スーティルも市場に出てくるかもしれないし、ケータハムやマルシャのドライバーについても同じことが言えるね」
ケータハムのエリクソンはすでにザウバー移籍が決まっており、ここでいうケータハムのドライバーとは可夢偉を指すものだと見て間違いない。
経験値ということであれば、スーティルの6割ほどの出走数しかないにもかかわらず、ほぼ同じ通算獲得ポイントを持ち、表彰台にも上った経験のある可夢偉は捨てがたい選択肢だと思われる。今後の進展を見守りたい。