今年もここまでのところ、2021年と2022年のF1チャンピオンであるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が圧倒的な強さでライバルたちをリードしている。
■決勝でも予選でも速さを見せるフェルスタッペン
25歳のオランダ人ドライバーであるフェルスタッペンは、今季ここまでに行われた12戦中10戦で勝利を収めており、第5戦マイアミGP以降は負け知らずの8連勝となっている。
予選でも速さが際立つフェルスタッペンは、第7戦モナコGPから第11戦イギリスGPまで5戦連続でポールポジションを獲得していた。
■ハンガリーではハミルトンがポール
だが、ハンガロリンクで開催された第12戦ハンガリーGPでは、メルセデスのルイス・ハミルトンが1000分の3秒差でフェルスタッペンを上回って今季初ポールポジションを獲得している。
ハミルトンに予選で勝つチャンスが生まれたのは、ハンガロリンクのストレートがそれほど長くないことから、レッドブルF1マシンの強みのひとつであるDRS(空気抵抗低減システム/可変リアウイング)の効果があまり発揮できなかったことがその理由のひとつだと考えられている。
■予選とスプリントシュートアウトで様相が異なったスパ
一方、夏休み前最後に行われたスパ・フランコルシャンでの第13戦ベルギーGPは今季3回目となるスプリントが開催される週末となったが、日曜日に行われる決勝レースのスターティンググリッドを決める金曜の予選ではフェルスタッペンが2番手のシャルル・ルクレール(フェラーリ)にコンマ8秒差の最速タイムをマークした。
だが、土曜日に行われたスプリントシュートアウトでは、ここでもフェルスタッペンが最速タイムを刻んだものの、2番手のオスカー・ピアストリ(マクラーレン)との差はわずか100分の1秒しかなく、ほかのドライバーたちとの差も同様に小さかった。これは、スパでのスプリントシュートアウトはDRSが使えない状況にあったためだと考えられている。
もちろん、天候に伴う路面コンディションなど、別の要素があったことも考えられるものの、同じサーキットでもDRSが使用できた場合と使用できなかった場合でレッドブルとライバルチームたちの差がかなり違ってくることは確かだと考えていいだろう。
■DRS使用を決勝に限定する案をF1が検討か
こうした中、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』が報じたところによると、F1はDRSの使用を決勝でのみ認め、予選では使用できないというレギュレーション変更を検討しているという。
もしそのルール変更が実現すれば、レッドブルが最も大きな影響を受けるチームとなるのは間違いなく、このルール変更はレッドブルに狙いを定めたものだと考えて間違いはないだろう。
実際のところ、現在コンストラクターズ選手権においてレッドブルに次ぐ2番手に位置しているメルセデスは、この案を歓迎しているようだ。
メルセデスのチーフテクニカルオフィサーであるマイク・エリオットは、レッドブルが「DRSを作動させるたびに稼ぐタイムは信じられないほどだ」と語り、そこに一定の介入をするべきだと示唆している。
■こうしたルール変更は不当だとフェラーリのボス
しかし、フェラーリのチーム代表を務めるフレデリック・バスールの考えは違うようだ。
バスールは、この件についてイタリアの『Autosprint(オートスプリント)』に次のように語っている。
「マックスは何も傷つけていないよ」
「彼はチームと一緒に素晴らしい仕事をしているだけだ。ほかの誰よりもいい仕事をね」
「彼の優位性に文句を言うことはできないよ」
■DRSだけに秘密があるわけではないとレッドブル技術責任者
レッドブルのテクニカルディレクターを務めるピエール・ワッシェは、自分たちは技術ルールに従ってマシンを開発しただけであり、不当に介入される理由はないはずだと主張している。
「ほかのチームよりも大きく開いたりするとか、そういうことは何もないんだ」
「それは全く我々のマシンのコンセプトによるものなんだ」
「ウイングが閉じているときにも我々には大きな空気抵抗はなく、ドライバーがそれを開けたときにはさらにスピードが得られるということだよ」
フランスの『L’Equipe(レキップ)』にそう語ったワッシェは、次のように付け加えた。
「我々の強みは純粋に空力にあるんだ」