ハースのケビン・マグヌッセンが、F1バーレーンGP決勝スタート直後に起きた大クラッシュからチームメートのロマン・グロージャンが生還できたのはハロ(halo)のおかげだったと語った。
●【決勝レース結果】F1第15戦バーレーンGP タイム差、周回数、ピット回数
ガードレールに高速で激突したグロージャンのF1マシンは衝撃で真っ二つに分断され、近年のF1では目にしたことがなかったほどの大火災が発生してしまった。それはまさに誰もが最悪の事態を覚悟するほどの大事故だった。
だが、グロージャンは炎に包まれたモノコックから自力で脱出。手と足首にやけどを負ったものの、X線検査により当初骨折の可能性が報じられていた肋骨やつま先にも異常がなかったことが確認されている、
2014年のF1日本GP決勝においてコースアウトしたジュール・ビアンキ(マルシャ)がコース脇のマシン撤去用重機の下に潜り込み頭部に大けがを負った(意識が戻らないまま2015年7月に死亡)ことなどを受け、フォーミュラマシンにおけるドライバーの頭部保護対策が急ピッチで検討され、その結果として2018年からF1に導入されたのがハロだった。
これまでにもいくつかハロの存在によってドライバーの頭部が守られたと考えられる事故も起きていたものの、今回の事故ではモノコック部がガードレールを突き破っていたもののハロがしっかりとグロージャンの頭部を守っていたことが明らかだった。
グロージャンは入院している病院からビデオメッセージをSNSに投稿。Ⅱ度のやけどを負ったと伝えられている両手は指先まで包帯が巻かれているものの、「大丈夫だよ。まぁ、ほぼ問題ないよ」と語っている。
「ものすごく胃が痛くなったよ。とても無事に生き残ることができそうには見えなかったからね」
2017年からグロージャンのチームメートを務めてきたマグヌッセンは母国デンマークのテレビ局『TV3』にそう語ると次のように続けた。
「間違いなくハロが彼の命を救ったんだ」
「あれがなかったら彼はこの世にはいなかっただろう。僕は最初それ(ハロ)に関しては違う意見を持っていたけれど、今ではそれがあってよかったと思っている」
ハースのチーム代表を務めるギュンター・シュタイナーは次のようにコメントしている。
「今日は幸運だった。守護天使が我々を見守ってくれていたんだ」
事故発生直後にグロージャンの救出に向かったFIA(F1統括団体の国際自動車連盟)のイアン・ロバーツ医師は、過去何年にもわたって取り組まれてきた全てのF1安全対策が今回の結果を生んだのだと考えている。
「もしそれらの対策のうちひとつでも欠けていたならば、今回の事故は非常に違う結果を招いていたかもしれない」
そう語ったロバーツ医師は、グロージャンが被っていたヘルメットのバイザーは火災により溶けてしまっていたことを認めている。
レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーも、これまでハロを含めたいくつかの安全対策に関しては“やり過ぎ”ではないかとの意見もあったものの、それらの導入を断固として推し進めてきたFIAは賞賛に値すると次のように語っている。
「屈することなく貫き通したFIAに敬意を表するよ。今回の事故はトップページを飾ることになるだろうし、F1ドライバーがあれほどの事故の後でも自分でクルマから脱出できることを明示することになるだろう」