ルノーF1プロジェクトを率いるシリル・アビテブール(マネジングディレクター)が、今のF1には自らのDNAを再発見する必要があると主張した。
■F1の本質は短距離競走
アビテブールは、近年のモータースポーツ界の動きを見ればフル電動フォーミュラカーで戦うフォーミュラEやハイブリッド方式を採用したプロトタイプマシンで争われるWEC(世界耐久選手権)の人気が高まる一方、F1は何を中心にアピールするべきなのかということがよく分からない状態になっていると考えている。
「すべてを混ぜ合わせることなどできないよ」
ドイツの『Speedweek(スピードウィーク)』にそう語ったアビテブールは次のように続けた。
「エンジンの寿命、タイヤの耐久性、そして燃料使用量といったようなものは私に言わせればF1のDNAには含まれないものだ」
「ル・マン(WEC)は常に信頼性が最も重要だった。だがグランプリレース(F1)は常に(スタート)ライトから(チェッカー)フラッグが振られるまでの短距離競走であるべきなんだ」
■小手先のルール変更だけでは不十分
だが2017年に新たなF1オーナーとなったアメリカのリバティ・メディアは2021年に向けて大規模なF1改革を行うことを検討している。そしてすでに2019年にはコース上でのオーバーテイクを増加させるための空力ルールの変更を行うことも決定している。
しかし、アビテブールはそれだけでは不十分だと次のように続けた。
「我々は2019年に向けた空力問題に対応した。だが重要な課題に関してはまだ手つかずのままだ」
「まだタイヤに関しては何も話をしていない。意図的性能低下によってレースをエキサイティングなものにするということは私も理解できる。だが、ドライバーが燃料をセーブしなくてはならないことに何の意味があると言うんだい?」
「私の考えだが、F1はファンに対して何をアピールするのかということを明確にする必要があるよ。ハイブリッド技術によって我々も近代的な風を取り入れている。だが、何が本当のメッセージなのか、私には理解できないんだ」
そう語った40歳のアビテブールは次のように付け加えている。
「私は、F1にあてはまるととてもいいことわざがあると思っている。それは“壊れていないものを修理してはならない”というものだ」