7度F1王座に輝いたミハエル・シューマッハがフェラーリはいつかセバスチャン・ベッテルと契約すべきだと周囲に語っていたというエピソードが紹介されたことがあったが、「まさにその言葉は正しかった」とフェラーリに加入した有名エンジニアが語った。
その人物とはベテランF1エンジニアのジョック・クリアだ。52歳となるイギリス出身のクリアは、ベネトン、レイトンハウス、ロータス、ウィリアムズといったチームでエンジニアを歴任。1997年にはジャック・ビルヌーブ担当エンジニアとしてF1タイトル獲得に貢献している。ビルヌーブとともにBARへ移籍したクリアは、2004年と2005年には日本人ドライバー佐藤琢磨の担当エンジニアを務めていたことでも知られている。
その後、ホンダ、ブラウンGP、そしてメルセデスと姿を変えたチームにずっととどまっていたクリアだが、2014年までルイス・ハミルトンの担当エンジニアを務めた後、フェラーリへ移籍を決めていた。
メルセデスAMGとの契約により、移籍にあたって昨年1年間はいわゆるガーデニング休暇と呼ばれる期間に充てることとなり、F1の現場からは離れていたが、ついに今年からフェラーリでの業務を開始している。
■ベッテルはシューマッハが語った通りのドライバー
そのクリアは、メルセデス在籍時代には2010年にF1復帰を果たしたシューマッハと3年間共に仕事をした経験も持っている。
その当時から、シューマッハは後輩のドイツ人ドライバーのことをよく周囲の人物たちに話していたようだ。クリアはそのときのことを思い出しながら、『Speedweek(スピードウィーク)』に次のように語った。
「ミハエル・シューマッハは常にセバスチャンのことをべたぼめしていた」
「そして、彼は完全に正しかった」
「今、私はフェラーリでセバスチャンと仕事をしているが、ミハエルが彼について語っていたことはまったく大げさでもなんでもなかったと断言できるよ」
「とりわけ、彼は詳細な部分にまで信じられないほどの取り組み方を見せるんだ。それによりスタッフやチームの長所を引き出してチームを前進させていく力を持っている。彼の貢献度は計り知れないし、彼の仕事への取り組み方が4回F1チャンピオンになった者と、そのほかのドライバーたちとの違いを生んだと言えるよ」
■今は1年間のブランクからのリハビリ過程だとクリア
そう語ったクリアは、1年間の休暇を終えてF1の現場に戻ってこられたのをうれしく思っていると次のように続けた。
「21年間ずっとレースをやっていたのに、突然家でソファに座ってテレビを見る生活を送ることになったのはつらかったし、楽しくなかった」
「それに、F1で求められる即断力というようなものがいかにすぐに失われてしまうかということも分かった。自分はまだそのスピードを取り戻そうとしているところだよ。予選やレースではショックを感じていたんだ」
ほほ笑みを浮かべながらそう語ったクリアは、次のように付け加えた。
「幸運なことに、私は素晴らしい人たちに囲まれているよ」