レーシングドライバーはふつう、速さの違いでチームメートに「ボコボコ」にされたくないものだ。ところが今週末の第16戦アメリカGP、ジェンソン・バトン(マクラーレン・ホンダ)は、まさにそれを僚友フェルナンド・アロンソに望んでいる。
戦闘力に苦しむマクラーレンの技術パートナー、ホンダは今回アロンソだけに改良型エンジンを投入した。
2周間前、第15戦ロシアGPのフリー走行で試しに走ってみたところ、悩み多き同チームに一条の明かりが差したのだ。
アロンソとバトンの世界王者ふたりを擁するにも関わらず英日連合のマクラーレン・ホンダは、アロンソによると1周あたり2秒半も遅れている。来季、その差をつめて優勝できるようになるのは容易なことではない。
しかし、そんな芸当が可能か聞かれたアロンソは「そう思う」と答える。ただし、マクラーレン・ホンダが「完ぺきな」シーズンオフを過ごさなければならないのは、アロンソも自覚している。
今週末のオースティン、バトンには新エンジンが与えられていない。彼としては、アロンソに精いっぱいの声援を送るのみだ。
「いい改良であることを願っている。今週末、彼(アロンソ)持ち前の速さで僕をボコボコにしてほしいね」と笑うバトン。
「こんなことを言うのも変な話だが、僕らが置かれた状況ではどうでもいいんだ」とバトン。彼が新ユニットを走らせるのは第18戦ブラジルGPになりそうだ。
以前、方向性を見失ったのではと危ぐされたホンダだが、この改良型エンジンで、2016年に向けての「開発の道すじ」がついたとアロンソは言う。
「パフォーマンスの飛躍的な進歩より、進むべき道を見出したことのほうが重要だ」「それをどう今後につなげるか、いろいろアイデアはある」
マクラーレン・ホンダにとっては、信頼性向上も重要な課題だ。「来年もエンジンを11機使うなんてゴメンだからね」とアロンソは釘を刺す。
2017年シーズンには、より速くアグレッシブなマシンを作れる技術規則が求められている。22日(木)のパドックでも盛んに話し合われていたが、アロンソは、競技規則にも一考の余地ありと考える。
「たとえばペナルティの問題だ」とスペインのマスコミに語ったアロンソ。
「(2輪モータースポーツ最高峰の)モトGPを見てごらん。(ライダーたちが)接触したって何のおとがめも無しさ。ところがF1はそこが違う。ソチ(ロシアGP)ではレースから数時間も経ってドライバーに罰が与えられるんだ」
ソチで大きなペナルティを受けたのはキミ・ライコネン(フェラーリ)だ。バルテリ・ボッタス(ウィリアムズ)との接触が尾を引いて、彼はオースティンでも同じような質問を受けている。
「あれもレースの一部さ」と主張するライコネン。「人々は、連なって走るマシンの群れより、あのような厳しい戦いを求めているはずだ」