2015年のF1もいよいよ来週開幕を迎える。だが、開幕戦オーストラリアGP(15日決勝)が行われるメルボルンでマクラーレン・ホンダMP4-30のステアリングを握るフェルナンド・アロンソの姿を見ることはできない。
2月22日(日)にバルセロナでテスト中に起こったクラッシュ事故で脳震とうを起こしたことで、アロンソは開幕戦を欠場することとなったためだ。
アロンソの事故に関しては、さまざまな推測や憶測が報じられており、開幕戦欠場が発表された後もとどまる気配がみえない。それどころか、一層過激な憶測が報じられるような状況にさえなってきている。
■アロンソ感電疑惑に新説登場
イタリアでF1中継を行っているテレビ局『Sky(スカイ)』は、アロンソが親しい友人や家族に対し、乗っていたマクラーレン・ホンダMP4-30のコントロールを失い、壁に激突する前に「脊椎(せきつい)部分に大きなショック」を受けていたことを打ち明けたと報じている
『Sky(スカイ)』は、アロンソが具体的に感電したと語ったわけではないと説明している。だが、こうした報道により、その事故には何か隠された事実があるのではないかとの疑惑がさらに強まることになりそうだ。
1990年代初期にF1出走を果たしたことがあるイタリア人元F1ドライバーのファブリツィオ・バルバッツァは、イタリアの『La Repubblica(レプブリカ)』に次のように語っている。
「フェルナンドは600ワットの電気ショックを受けたことで重大な影響を受けてしまったんだ」
「集中することが困難となり、一時的に静脈が閉塞(へいそく)してしまったのだ」
バルバッツァは、この情報をどこで入手したのかは明らかにしていないものの、信頼性の高いものだと主張している。
■事故による脳震とうを否定するルネ・アルヌー
さらに、70年代終盤から80年代にわたってF1で活躍し、キャリアを通じて7勝をあげたフランス人元F1ドライバーのルネ・アルヌーも、ジュネーブ・モーターショーの会場で記者たちに次のように語った。
「アロンソの医師たちが(開幕戦欠場を)勧告したことは、私にとっては少しの驚きでもないよ。私はフェルナンドが事故を起こす前に身体的な異常を抱えていたと確信しているからね」
「私だってF1で走っていた人間だ。自分が何を言っているかは分かっているよ」
かつてルノーやフェラーリで活躍していたアルヌーはそう語ると、次のように続けた。
「衝突は横からだったし、かすめたようなものだった。それでは(アロンソが受けた)ダメージの説明がつかないんだ」
「あのとき風が吹いていたことが、うまい言い訳として使われたということさ」
■神経科医もマクラーレンの説明を疑問視
バルセロナのクイロン・デクセウス病院で神経科医を務めるロベルト・ベルビス博士は、アロンソが開幕戦を欠場するのは「セカンドインパクト症候群」のリスクを回避するためだと説明されていることに対し、けげんな表情を見せている。
「もし、すでに脳震とうの症状が見られないのであれば、SIS(セカンドインパクト症候群)を防ぐためというのは論理的説明ではないね。すでに回復しており、頭痛や集中力欠如といった問題もなく、患者が正しく会話ができているようなら、もはや2回目の衝撃による危険はないと言える」
『AS』紙にそう語ったベルビスは、ひとつの仮説として、アロンソに説明のつかない意識消失の症状が残っているのではないかと次のように続けた。
「もし、原因不明の意識消失症状が残っていたとすれば、アロンソは3週間か4週間にわたって運転を控えるほうが賢明だ。そして検査を受け続けなくてはならない」
そう述べたベルビスは、次のように締めくくっている。
「だが、メディアに対してアロンソが100パーセント回復していると説明しながら、セカンドインパクト症候群のリスクを回避するためにレースに出ないと言うのは意味をなさないよ」