すでにフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)が来季にむけマクラーレンに移籍することは公然の秘密だと受け止められており、今後の興味は、そのアロンソのチームメートになるのが誰なのかということに絞られてきそうだ。
■アロンソのチームメートは誰に?
先週末のF1ブラジルGP(第18戦)における態度やコメントを見れば、ジェンソン・バトン(マクラーレン)がシートを失うことになるのはほぼ確実だと見られている。そうなれば、今年マクラーレンからデビューを飾ったルーキーのケビン・マグヌッセンがアロンソのチームメートになりそうだ。
だが、アロンソ自身はバトンがチームメートとなるほうが好ましいという発言をしている。2009年のF1チャンピオンであり、現役ドライバーの中では最多出走記録を持つ経験豊かなバトンのほうが、新たにホンダV6エンジンを搭載するマクラーレンF1カーの開発を進める上では有益だというのがその理由だ。
アロンソは、ブラジルGPが行われたインテルラゴスでフランスの『Le Figaro(フィガロ)』に次のように語っていた。
「僕は彼(バトン)が(F1に)残ってくれることを望んでいるよ」
「彼は非常に才能豊かなドライバーだし、いい人物だ。彼のような人がいてくれるのは僕たちのスポーツにとっていいことだよ」
だが、バトンはアロンソがこうしたコメントを行った真意は分からないとし、マクラーレンの決断に影響を及ぼすことはないだろうとイギリスのメディアに対し次のように語った。
「難しいね。フェルナンドが頭の中で何を考えているのかなんて誰にも分からないだろう?」
■マクラーレンへの不満を募らせるバトン
結局のところ、マクラーレンも財政的問題によって最終判断を下すことになるかもしれない。もしバトンを残すことにすれば、マグヌッセンよりも何倍も多い報酬を負担しなくてはならなくなるためだ。
だが、バトンは、もしレースができるのであれば、報酬が下がってもかまわないとの考えをほのめかしている。
「僕は今でもレースでお金を稼ぎたいと思っているよ。でも、僕は自分だけがよければいいと考えるようなドライバーじゃないし、ほかの何人かのドライバーみたいに大金を得ることができないとしてもどこかでレースをするよ」
いずれにせよ、15年におよぶ傑出したF1キャリアを持ち、そのうち5年をマクラーレンとともに過ごしたバトンがF1を去ることがだんだん現実味を帯びてきていることは間違いない。バトンはさらに次のように続け、いまだに態度を表明しないマクラーレンへの不満を表明している。
「それって、両親が背を向けながら“今年のクリスマスにあなたを呼ぶかどうか分からない”と言うようなものだよね。でも、兄弟が来てくれれば、それはすごくうれしいだろう」
「家族の一員だと感じられることは、お金よりもさらに重要なことだからね」
バトンの言う両親とは、マクラーレン、そしてF1であり、ひょっとすると「兄弟」とはうわさされているWEC(世界耐久選手権)のポルシェチームのことかもしれない。
■クルサードもバトンの立場に同情
かつてマクラーレンで活躍したこともある元F1ドライバーのデビッド・クルサードも、マクラーレンはドライバーのことを、あたかも古くなったらすぐに交換できる「電球」のようにしか思っていないと語り、バトンを擁護した。
「多分、それ(バトンのコメント)に対してチームも何らかの反応を示したはずだ。だけど、僕は自分の意見を述べるよ」
『Telegraph(テレグラフ)』にそう語ったクルサードは、次のように続けた。
「ドライバーに対しては正当な取り扱いをしないとね。彼(バトン)をこうした中ぶらりんの状態に置いておくのは正しいやり方じゃないよ。もしそれが彼にとって最後となるのであれば、最終戦ではお祝いをしないと。だけど、まだどうなるか分からないけれどね」
「彼はもっとよく処遇されるにふさわしいよ」とクルサードは付け加えた。