今季からF1に導入されたV6ターボエンジンの音が貧弱になったとの嘆きの声が多く聞かれる中、F1関係者の中にはそれを陰謀だと考える者たちが出始めているようだ。
F1最高責任者のバーニー・エクレストンは、これまで一貫してF1が新たに採用したV6ターボの音を非難してきている。これに関して、エクレストンが故意にF1の価値を下げてしまおうと考えているのではないかといぶかしがる者も出てきている。
そうした疑いを持ち始めた者のひとりが、『Daily Mail(デイリー・メール)』の記者であるジョナサン・マクエボイだ。マクエボイは次のように書いた。
「そして、彼は評価額が目減りしたときに安い金額でF1の株式の過半数を買い占めようと画策しようとするだろう。そうすれば彼は今後もずっとF1の責任者であり続けることができる」
このような疑問を持つ者はマクエボイだけではない。
世界的エナジー飲料メーカーであるレッドブル社の総帥であり、レッドブルF1チームのオーナーでもあるディートリッヒ・マテシッツも、エクレストン同様に、環境に優しい、音の小さくなった新たなF1に対して批判的な発言をしている。
『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』のミハエル・シュミット記者は、マレーシアにおいてエクレストンに対し、オーストリアの大富豪であるマテシッツはF1を乗っ取るためにF1の評価額を下げようとしているのではないかとの質問をぶつけた。
それに対するエクレストンの答えは、「分からないね」というものだった。
そういううわさが出てきた理由は明らかだ。それは、かねてより結びつきが深いことが知られているエクレストンやマテシッツ、そしてレッドブルのドライバーであり4年連続F1チャンピオンのセバスチャン・ベッテルといった面々が新しいF1に対する攻撃的な発言を繰り返しているからにほかならない。
しかし、やはりレッドブルの一員であり、これまでエクレストンの後任候補として名前があげられてきているレッドブルのチーム代表、クリスチャン・ホーナーは、自分はそうした陰謀説には関係ないと主張した。
「F1はバーニーが製品化したものだから、彼がF1を売るべきだよ。F1はがらくたじゃないからね」、とホーナーは『Times(タイムズ)』紙にコメント。
だが、エクレストンはそれに対して次のように反論した。
「言わせてもらいたいのは、これ(F1)は私の製品ではないということだ。これが欲しいと思ったことなどないよ。だから私を非難するのはおかどちがいだ」
シュミットはさらに、エクレストンが批判をすればF1の価値を下げることにつながるとは考えないのかと質問したが、それに対してエクレストンは次のように答えた。
「私は今のF1に満足していないんだ」
「どうしてこういうルールができてしまったんだい? なぜならエンジニアたちがこれを作ったからだよ」
そう述べたエクレストンは、次のように付け加えた。
「誤解しないで欲しいんだが、こういうエンジンはエンジニアリングによる素晴らしい傑作だ。だが、それはF1が必要としているものではないんだ」