ドイツのモータースポーツ界において伝説的な人物であるハンス・ヨアヒム・シュトックが、最近表彰台に上るたびにブーイングを受けるセバスチャン・ベッテル(レッドブル)を擁護した。
シュトックは、ミュンヘンの『Abendzeitung(アーベンツァイトゥング)』紙に対し、2010年以降3年連続でF1タイトルを獲得し、今年もその記録を4年連続に伸ばすことがほぼ確実となっているベッテルが、優勝することや、キミ・ライコネン(ロータス)やニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)などと比べて「カッコよくない」あるいは「キュートではない」ことでブーイングの対象となるにはあたらないと、次のように語った。
「私に言えるのは、セバスチャン君、気にするな、ということだけだ」
シュトックは、自身もドライバー時代に何度かブーイングを受けたが、それはベッテルの状況とは比較にならないと語った。なぜならば、ベッテルは「何が悪かったのかまったく分からない」からだという。
62歳となるシュトックは、ベッテルは「フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)やライコネンのようなカリスマ性を持っていない」とし、次のように続けた。
「だが、それがあろうがなかろうが、彼は素晴らしいヤツだよ」
シュトックによれば、ライコネンやルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)は「典型的なドライバーのイメージ」に合うという。
「ひとりは女を連れているし、もうひとりはときどきテーブルの下で酔いつぶれている。そして、粗野で荒削りなドライバーのほうが、ときによっては、常に勝利する巧みなドライバーよりもファンから愛されるものなんだ」
ブーイングを止めるためにはベッテルはどうすればよいかと尋ねられたシュトックは、勝つのをやめることかもしれないと冗談で答えている。
だが、F1最高責任者であるバーニー・エクレストンは、2014年にはレッドブルが打ち負かされることになるかもしれないと考えているようだ。エクレストンは、『Bild(ビルト)』紙に次のように語った。
「これまでとは完全に違うクルマ、新しいエンジン、新しいルールでやることになる」
「フェラーリやメルセデスAMGにとってはベッテルに追いつくためのチャンスになるだろうね」
エクレストンは、圧倒的な強さをみせるベッテルを、ミハエル・シューマッハやアイルトン・セナの時代にたとえた。だが、2008年のF1チャンピオンであるハミルトンは、セナはヒーローだったとしつつも、ハミルトン自身はベッテルのようにF1を支配したいとは必ずしも思っていないと主張した。
「僕は、あんなふうに圧倒的なリードができるようになりたいとは思わないんだ。僕は彼でもほかの誰とでも、戦うことができることを望んでいるよ」、とハミルトンは『Independent(インデペンデント)』に語った。
だが、ハミルトンのボスであるメルセデスAMGのトト・ヴォルフ(エグゼクティブディレクター)は、フランスの『L’Equipe(レキップ)』に対し、「今のレッドブルのようになることが、我々の今後何年間かにかけての目標だ」と語っている。
フェラーリ会長のルカ・ディ・モンテゼモーロは、それと同じような言い方はしなかったものの、間違いなくベッテルのようにF1を席巻する時代を迎えたいと考えているようだ。
事実、ベッテルに対するブーイングの件を質問されたモンテゼモーロは、イタリアの『Tuttosport(トゥットスポルト)』に、ベッテルは「素晴らしいドライバー」だと語るとともに、次のように続けている。
「シンガポールは、いいフェラーリのテストだったよ。我々は普通のチームの中では最高だった。だが、私はまた非常に特別なチームに返り咲くことを望んでいるんだ」