2016年のF1チャンピオンであるニコ・ロズベルグが、同じドイツ出身のセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)がF1を続けながら環境保護活動を行っていることは「立派なこと」だと語った。
■「偽善者」との批判も受けるベッテル
2010年から2013年にわたってレッドブルで4年連続F1チャンピオンとなった実績を持つベッテルだが、近年は環境問題などに関するコメントやアクションをすることでも知られるようになっている。
だが、燃料を大量に消費するF1でレースをしながら、気候変動やその他の環境問題に対する批判的なコメントを行っているベッテルを「偽善者」だと指摘する声があるのも事実だ。
例えば、今季のF1第9戦カナダGPが開催されたモントリオールでは、ベッテルはカナダが「タールサンド採掘」という「気候犯罪」を犯していると批判するシャツを着てパドックに現れていた。
これに対し、カナダのアルバータ州でエネルギー担当大臣を務めるソーニャ・サベージは、ベッテルが所属するアストンマーティンが世界有数の石油会社である『サウジアラムコ』とタイトルスポンサー契約を結び、そこから資金を得ていることに言及しながら、ベッテルは偽善者に過ぎないと批判していた。
■サウジアラビアとアストンマーティンの関係がさらに強固に
そして、最近になってアストンマーティンと石油大国であるサウジアラビアとの関係がさらに緊密なものとなることが明らかになっている。
『Financial Times(フィナンシャル・タイムズ)』によれば、カナダの大富豪として知られるローレンス・ストロールがオーナーを務めるアストンマーティンは、このほどサウジアラビアの政府系ファンドに16.7パーセントの株式を売却することになったという。そして、それによってアストンマーティンは約7億7,500万ドル(現在のレートで約1,036億円)の資金を調達することになるという。
ストロールによれば、この取引は「とんでもない額となっている負債を処理するため」のものだという。
■ベッテルは信念を持って環境保護に取り組んでいるとロズベルグ
ともあれ、サウジアラビア系ファンドがアストンマーティンの共同オーナーとなれば、そのチームでF1を戦っているベッテルの環境活動に対する見方もさらに厳しいものとなる可能性もありそうだ。
しかし、ロズベルグは、ベッテルはたとえ偽善者だと非難されても、環境問題について発言することは可能だと考えている。
「僕も彼のメッセージが信頼性を持って人々に伝わるのは不可能だろうと予想していたよ」
スポーツ専門放送局の『Eurosport(ユーロスポーツ)』にそう語った37歳のロズベルグは次のように付け加えた。
「でも、セバスチャンは心底から信念を持ってそうしているし、僕もそれはとてもいいことだと思っている」
■矛盾を抱えながらも活動することはできる
だが、ロズベルグも、ベッテルの現在の状況が明らかに偽善的であるのは事実だと認めている。
「レースをすることは矛盾を伴うものなんだ」
「一方では、彼は環境をサポートするために、感情的に多くの行動を行っている」
「その一方で、彼自身が旅をして燃料を燃やすことで、気候変動の一因ともなっている。そして、彼はあと数年はこの情熱を追求したいと思っている」
「だけど、僕はそれでも彼がこの分野でこれほどまでに献身的であることは称賛に値すると思うし、それは本物だと伝わってくるよ」
ロズベルグはそう語ると、次のように付け加えた。
「最大の情熱をあきらめることは、彼に多くを要求することになるだろう。だけど、もし彼が気候変動との戦いを続ける決意があり、それと同時にやり続けるのであれば、僕としてはそれでかまわないよ」。