2021年のF1は現チャンピオンのルイス・ハミルトン(メルセデス)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)による拮抗したタイトル争いが繰り広げられるだろうと考えていた者が多い。
ところが、4レースを終えた時点でのこの2人の戦いはハミルトンから見て3勝1敗という少々意外とも言える結果となっている。
現在のメルセデスF1チームが活動を開始したのは2010年のことだが、圧倒的にF1を支配するようになったのは2014年にハイブリッド方式の現行F1エンジンが導入されてからだ。
その2014年以降、メルセデスは2020年まですべてのシーズンでドライバーズタイトルとコンストラクターズタイトルを手中に収めてきている。
今年は、そのメルセデスを上回るF1マシンを手にしたとさえ言われていたフェルスタッペンだが、ここまでのところはハミルトン有利の展開となっている。
こうした中、ロシアのテレビ局『Match TV(マッチTV)』でF1解説者を務めるアレクセイ・ポポフが次のように語った。
「統計的にチェックしたところ、最大の驚きはルイス・ハミルトンがこれまでのキャリアにおいてこれほどまでにシーズンをうまくスタートさせたことはなかったということだ」
「あなたにはその理由が分かるだろうか?」
「(ハミルトンが)7度タイトルをとれたのは、シーズンを支配したマシンがあったからだ。しかし、ルイスが最初の4レースで3勝と2位1回という成績で終えたことは彼のこれまでのキャリアの中で一度もなかった」
「どうしてこういうことになったのかは、誰も理解できていないよ」
「ウイングを壊してグラベルにはまってしまったときでさえ、彼はばん回してみせた(第2戦エミリア・ロマーニャGP)。1位ではなく2位だったがね。そのほかのレースではすべて彼が勝っている」
その理由について質問されたハミルトンは、それはフェルスタッペンに勝つために自分もチームも常にベストを尽くさなくてはならないからだと次のように答えている。
「毎年、僕はもっと改善しようと努めているんだ。不可能だと思われることもある。だけど、それは必要なことなんだ」
「レッドブルは信じられないほど好調なスタートを切った。マックスにはタイトルを狙えるマシンがあり、チャンスもある。それは僕たちも同じさ」
「僕がベストを尽くすだけでなく、チームも週末の始めから終わりまでベストを尽くすことが必要なんだ。そうでなければ、ほかの連中が勝ってしまうよ」
確かに、第4戦スペインGPではフェルスタッペンがスタートでポールシッターだったハミルトンをオーバーテイクしてレースをリードしていた。恐らく、ハミルトンがフェルスタッペンと同じピット戦略をとっていたならば、フェルスタッペンが先頭でチェッカーフラッグを受けていただろう。
しかし、メルセデスは終盤にハミルトンをピットインさせて新しいタイヤに交換。この作戦が見事に的中し、ハミルトンが見る見るフェルスタッペンとの差を詰めて、ついにはオーバーテイクを成功させたのだ。
つまり、ドライバー同士の腕もさることながら、チーム全体としての戦略実行能力、決断力などに関してはまだメルセデスの方がレッドブルよりも一枚上手だということかもしれない。