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F1生き残りと昇格を賭けるリカルドを“2人のCEO”が支持 NetflixでF1復帰の舞台裏が明らかに

2024年03月03日(日)22:56 pm

Netflixが放送してF1がアメリカで大人気になったきっかけの『Drive to Survive(邦題:栄光のグランプリ)』の新シーズンで、ニック・デ・フリースに変わってダニエル・リカルドがシートに復帰するシーンが描かれている。

リカルドはクリスチャン・ホーナー代表(レッドブルF1)のお気に入りで、シート復帰に尽力していることがわかる。

(以下、ネタバレが含まれています。)

■2023年7月、F1イギリスGP

2023年7月9日、第11戦イギリスGP。これが新人ニック・デ・フリースにとって最後のF1GPとなった。新人とはいえ、明らかに角田裕毅に見劣りしていて、結果が出せないままだった。

レッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表は、「F1は単純なビジネスだ。速ければ好かれ、遅ければ好青年でもシートの保証はない」と番組内のインタビューで語っている。

そしてシルバーストーンのパドックに設営されたレッドブルとアルファタウリのホスピタリティブースでは、クリスチャン・ホーナーとピーター・バイエルの会話が明らかにされている。

ホーナー「ニックは不振が続いている」
バイエル「彼はこのコースに慣れているから大丈夫かと思ったが苦戦している。起用を続けるべきか悩む」
ホーナー「しばらく結果を出していない」
バイエル「そうだね」
ホーナー「ああ」

■ホーナーがリカルドに電話

そして、ホーナーはリカルドに電話をしているシーンが映される。

ホーナー「やぁダニエル、クリスチャンだ。君が興味を持ちそうな話があるんだ」

ホーナー「そうだ、考えてみてくれ」

シーンは「2日後、シルバーストーン」となり、リカルドがレッドブルF1のテストを実施する場面となる。実際にF1イギリスGPの2日後、リカルドはレッドブルF1のテストを実施した。

しかし、この電話の時期は編集された可能性が高い。映像の中でこの電話の内容と時期は明かされていないが、過去に報道された時期を考えると、電話した時期は4月下旬から5月上旬だと考えられる。

実際、5月上旬に「リカルドはイギリスGP後にシルバーストンで行われるテストでレッドブル2023年型F1マシン『RB19』のステアリングを握ることになる」とイギリスの『Telegraph(テレグラフ)』が報じている。

つまり、ホーナー代表は、序盤数戦で思うような結果を出せなかったニック・デ・フリースがこのまま結果を残せなかった場合に備えて、リカルドに準備をさせていたと考えられる。

F1チーム代表の立場として、チームとしての結果を残す事が何よりも大事な仕事であり、そのために準備を万端にしておくのは当然のことかもしれない。

ホーナー代表としては、レッドブルF1を最強チームにしておくためには、2チーム4シートのメリットを最大限に活かして、結果を残せるドライバーを常に準備しておきたい。

■テストに向かうリカルド

テストのためシルバーストーンに向かうリカルドは緊張した面持ち。F1マシンに乗るのは8ヶ月ぶりだ。

ホーナーはインタビューで「シルバーストーンを数周走る機会を与えた。ダニエルのレベルを確かめる判断基準になる。他のドライバーと比べてどうかな」と明かしている。

リカルドの代理人「8ヶ月ぶりにドライブできそう?」
リカルド「やるしかない、大丈夫だよ」「ヘルメットを被って1周走れば思い出すよ」

ホーナーは「ニックは不振続きで、テスト次第ではダニエルに乗ってもらう」と明かしている。

リカルドは「アルファタウリは現状に満足していない。テスト次第でF1に復帰出来ると思う」と現状を理解している。

■シルバーストーンテストの裏側

場面は早朝から慌ただしく準備しているシルバーストーンのガレージへ。そこには、クリスチャン・ホーナー代表と共に紙コップで紅茶を飲むピーター・バイエル(アルファタウリ)の姿があった。

ホーナー「今日いい結果が出せれば新しいスタートを切れると思う。レッドブル・レーシングに復帰できるチャンスだ。彼もそれをわかっている」
バイエル「そうだね」

リカルドは事前インタビューで「テストの内容は分からない。不安や疑念もある。リアルなシミュレーターは何度も乗ったけど、リアルなクルマは初めてだ」「実力を証明したい」と答えている。

ホーナーは「誰もがあの日のダニエルが戻ってくるのを期待している」と語る。

そして貸切のテストでコースに出ていったリカルドは序盤でスピンしてしまうが、徐々にタイムを出していく。

タイムを見ていたホーナーは「速いな、いいね」とエンジニアと話す。

テスト中、ホーナーは「ちょっと時間あるかな?ちょっと紅茶でも飲みながら話そう」とリカルドの代理人たちとバイエルとともに裏側のテーブルで紙コップの紅茶を飲みながら話すシーンへ。

ホーナー「彼が今走ったラップはマックス(フェルスタッペン)に匹敵するタイムだった」「我々が知っている速いダニエルが戻ってきた」「ピーター(バイエル)の意見も聞いてみたいが、私は次のレースで彼を見てみたい。ピーターはどう思う?」
バイエル「8ヶ月ぶりにしては上出来だ。さっきも彼と話したが、彼は速さだけではない、我々は彼から多くを学べる」
ホーナー「決まりだな」

そしてホーナーとバイエルは、リカルドの代理人たちと笑顔で握手をした。

■リカルド、F1復帰を喜ぶ

その後、マシンから降りたリカルドに対して、ホーナーはガレージ内でこう語っている。

ホーナー「全てが整った。君さえよければどうかな」
リカルド「ほんとに」
ホーナー「ああ、ハッピーか?魔法が戻ったな。よかった」
リカルド「ありがとう」
ホーナー「チームに戻ってきたな、よくやった」
リカルド「ありがとう」
ホーナー「クラッシュするなよ」

リカルドは「1年前はF1に復帰できるかわからなかったから、すごく嬉しいよ。すごくエキサイティングだ。トラック上で証明してみせる」と語っている。

こうしてリカルドは実力を証明してF1のシートを手に入れ、次戦ハンガリーGPから復帰した。

■リカルド推しのホーナーとバイエル

ここまでの一連の流れで、それぞれの立場から次のようなことが読み解ける。

レッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表はダニエル・リカルドにはまだ速さがあると信じて、実際にテストをして証明し、F1復帰の後押しをしていること。

チームCEOに就任したばかりのピーター・バイエル(RB)は、経験豊富なホーナーからチームCEOとしてやるべきことを学んでいるということ、そしてRBチームとしても、リカルドの経験から学ぼうとしていることだ。

■生き残りと昇格を目指すリカルド

リカルドは実力を認められてF1界に復活し、1戦1戦がF1で生き残るために重要なのを理解している。まさに『Drive to Survive(=生き残るために走る)』だ。

マクラーレンとの契約を打ち切られてF1シートを失ったリカルドは、優勝できるレッドブルF1のシートが欲しいと公言しており、それを目指してリザーブ・ドライバー契約を受け入れ、旧アルファタウリからの復帰を受け入れたという経緯がある。

リカルドは生き残りが厳しいF1界で、年齢的にもトップチームのシートを手に入れる最後のチャンスとわかっている。自分の経験をフルに活かしてRBを自分のチームにし、自分が結果を出しやすいように戦略を練るのはF1ドライバーとしては当然かもしれない。

F1界は世界一を競う厳しい世界だ。リカルドはF1で生き残るため、そしてレッドブル昇格のわずかなチャンスを手に入れるため、角田裕毅を相手に手を緩めることはないだろう。

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