アンドレッティ・キャデラックのF1新規参戦問題をめぐって、F1、F1チーム、そして統括団体であるFIA(国際自動車連盟)の間で大きな紛争に発展する可能性がある。
■アンドレッティ・キャデラックの前に立ちはだかる障壁
FIAはアメリカのモータースポーツをけん引する人物のひとりであり、元F1ドライバーでもあるマイケル・アンドレッティが率いるアンドレッティ・キャデラックにはF1に参戦する資格があると承認したことを明らかにした。
そして、今後この問題はF1オーナーであるリバティ・メディアが運営するF1商業権管理組織であるFOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)の手に渡り、商業的交渉が行われることになる。
だが、アンドレッティ・キャデラックに待ち受けるのは茨の道かもしれない。
ある匿名の関係者は、F1最高責任者(CEO)のステファノ・ドメニカリと、FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長の関係がうまくいっていないことがまずは大きな問題となるだろうと考えている。
「ステファノ・ドメニカリとFIA会長のモハメド・ベン・スライエムは犬猿の仲だ」
『f1-insider.com』にそう語ったその関係者は、次のように付け加えている。
「アンドレッティチームの参戦可能性をめぐるこの論争は、爆発を呼ぶ火種となる可能性がある」
■既存チームのほとんどはアンドレッティ・キャデラック参戦に反対
現時点ではっきりしているのは、リバティ・メディアと多くのF1チームが、アンドレッティ・キャデラックの参入は既存のチームの利益を損ねることにつながるという理由で基本的に反対の意向を示していることだ。
例えば、レッドブル首脳のヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)は、次のように語っている。
「11番目のチームが加われば、各チームがより多く収入を得ることを諦めなくてはならないだけでなく、個々のチームの価値が下がることになる」
「もちろん、誰もそんなことは望んでいない」
■アンドレッティが来てもサーキットに居場所はない?
80歳のマルコはさらに、アンドレッティがF1に参戦するには物理的に解決できない問題もあると指摘している。
「ほとんどのサーキットはすでにスペースが限界に達しているんだ」
そう語ったマルコは、次のように続けた。
「すでに非常に狭くなっているピットレーンのどこに追加チームのためのスペースを提供できると言うんだ?」
「パドックのホスピタリティ施設もおそらく縮小せざるを得ないだろう。そして、チームたちにはそんなことをする気はないよ」
■歓迎する者も
しかし、例外もある。マクラーレン・レーシングのCEOを務めるアメリカ人のザック・ブラウンはアンドレッティ・キャデラックの参戦に好意的だと伝えられている。
また、アルピーヌを傘下に置くフランスのルノーは、アンドレッティ・キャデラックへエンジン供給を行うための仮契約を済ませていると考えられており、もちろんその新規参戦を歓迎する立場をとっている。
■欧州連合が介入する事態となれば長期的法廷闘争に?
だが、もうひとつの大きな問題は、ベン・スレイエムFIA会長がすでに示唆しているように、仮にF1がアンドレッティ・キャデラックの参戦を拒否した場合、欧州連合(EU)がそれを反競争的措置に関する法律に違反しているとして介入してくる可能性があることだろう。
「権力闘争が起こるだろう。長期にわたる法廷闘争に発展する可能性もある」
前出の匿名関係者はそう語ると、次のように付け加えている。
「そして、このスポーツは敗者となるだろう」。