元F1ドライバーのゲルハルト・ベルガーは、今のフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)を見ていると、昔の自分を思い出すという。
2023年F1シーズンもまだ6レースを終えたばかりだが、すでに2021年と2022年のF1チャンピオンであるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が3年連続でのドライバーズタイトルを獲得するのはほぼ間違いないと考えられる状況となってきている。
今季は、同じレッドブルF1マシンを駆るメキシコ人ドライバーのセルジオ・ペレスがフェルスタッペンにとって唯一の対抗馬だと考えられている。だが、先週末のF1モナコGPでは、予選Q1でクラッシュしてしまったことで決勝を最後尾グリッドからスタートしたペレスは、結局このレースをノーポイントで終えてしまった。
これにより、ランキングトップのフェルスタッペンと、2番手につけているペレスとの差は39ポイントにまで広がってしまっている。現在のフェルスタッペンの速さと安定度を考えれば、この差はペレスにとって致命的と言っても過言ではないかもしれない。
■フェルスタッペンの独走状態だとベルガー
こうした中、1980年代後半から90年代前半にかけてフェラーリやマクラーレンで活躍した現在63歳のベルガーは、母国オーストリアの『Kronen Zeitung(クローネン・ツァイトゥング)』に次のように語った。
「どこかでフェルスタッペンとペレスがセナ対プロストの再来だという記事を目にしたよ。確かに、フェルスタッペンはその域にある」
「ペレスはマックスについて行こうと全力を尽くしている。しかし、私には、フェルスタッペンが独走しているように見えるよ」
■今季のアロンソは1988年のベルガーと同じような立場
F1関係者の中には、そのペレスに代わって、2005年と2006年のF1チャンピオンであるフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)がフェルスタッペンのライバルとして浮上してくる可能性があると考えている者もいるようだ。
実際のところ、41歳のアロンソは、今季ここまでの6レースで2位1回、3位4回、4位1回という成績を残しており、現時点ではランキング2番手のペレスとの差はわずか12ポイントとなっている。
「私は、今のアロンソと同じ役割を担っていたんだ」
そう語ったベルガーが示唆したのは、アイルトン・セナとアラン・プロストを擁するマクラーレンが全16戦中15勝をあげた1988年のことだ。
当時フェラーリに所属していたベルガーは、モンツァで行われた第12戦イタリアGPで勝利し、マクラーレンの全戦制覇を阻んでいる。
「そのことを懐かしく思い出すよ。それは、マクラーレンに勝ったからではなく、フェラーリでモンツァで勝つという特別な物語だったからさ」
「その1988年シーズンはちょっと今年に似ている気がするね。同じような状況だからね。私はアロンソと同じように、待つ立場にいたんだ。前の方で、何かが起こるのを待っていることがよくあったよ」
1988年のイタリアGPでベルガーが乗るフェラーリF1マシンが勝利できたのは、プロストがエンジントラブルを抱えてリタイアし、トップを快走していたセナが周回遅れのマシンを追い抜く際に接触してやはりリタイアしたことによるものだった。
■レッドブルが今季を無敗で終える可能性は?
一方、ベルガーは、今シーズンここまでの6レースで全て勝利を収めているレッドブルが、マクラーレンが1988年に作った記録を破ることができるかどうかはまだわからないという。
今年は第6戦として予定されていたエミリア・ロマーニャGPが中止となったことで、実際には全22戦で行われることになる。全16戦だった1988年と単純に比較することはできないが、ひとつの指標となるのが勝率だろう。
16戦中15勝を達成した1988年のマクラーレンの勝率は約93.8パーセントだ。そして、レッドブルが今年それを上回るためには22戦中21勝が必要となる。レース数は多いものの、レッドブルが2レースで勝利を逃すことになれば、1988年のマクラーレンの勝率には届かないことになる。
そして、年間レース数が多いということがレッドブルにとっての不利な材料となるとベルガーは考えているようだ。
「以前よりもレース数が増えていることを忘れるわけにはいかない。つまり、全てのレースで事故や技術的問題が発生しないとは考えにくいからね」
「だが、純粋なパフォーマンスの面からすれば、間違いなくそれは可能だよ」
■フェルスタッペンはハミルトンの持つF1記録を破ることも可能
そう語ったベルガーは、フェルスタッペンが最終的に現在のF1通算記録を全て破る可能性はあると考えている。
「私は、マックスがハミルトンの103勝を含むF1における従来の記録を全て塗り替えることができると確信しているよ」
F1通算10勝の記録を持つベルガーはそう語ると、次のように付け加えている。
「彼は、そのことは自分にとっては重要ではないと言っている。だが、それは今後変わっていくと思うよ」。