かつてベネトンやトヨタで活躍した元F1ドライバーのアレクサンダー・ブルツが、今年のレッドブルの優位性は単に高効率のDRS(空気抵抗低減システム/可変リアウイング)のおかげだけではないと主張した。
■今年はもうレッドブルには追いつけないとメルセデスのボス
2023年のF1はまだ2レースを終えただけだが、今年のタイトル争いをリードするのがレッドブルであることは誰の目にも明らかとなっている。
メルセデスのF1ワークスチームを率いるトト・ヴォルフ(チームCEO兼代表)も、すでに2023年にレッドブルに追いつくチームが現れる可能性はないと認めている。
「短期間で差を縮められると考えるのは現実的ではないよ」
オランダの『De Telegraaf(テレグラーフ)』にそう語った51歳のヴォルフは次のように続けた。
「レッドブルと同等のマシンを手に入れるには、数か月はかかるだろう」
「我々はただ持てる力をすべて出し切って、その結果がどうなるかを見るだけだよ」
■レッドブルの強さの秘密はDRSだけにあらず
F1関係者の中には、レッドブルの強さの秘密は、効率の良いDRSシステムにあると考えている者もいるようだ。
先行マシンが発生する乱気流に苦戦しているドライバーが多い中、マックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスが駆るレッドブルF1マシンは追い抜き支援システムであるDRSを作動させることで時速20キロメートルほどのブーストを得られていると考えられている。
だが、現在もF1ドライバーによる任意団体であるGPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)を務めるブルツによれば、それはあまりにも単純な見方だと言う。
「彼らは、ほかのどのマシンよりも低い車高で走ることができるんだ」
母国オーストリアの放送局『ORF』にそう語った49歳のブルツは、次のように続けた。
「それはつまり、アンダーボディによってライバルたちより大きなダウンフォースを発生させることができるということさ。それゆえ、逆に言えば、ウイングをあまり使わなくてもより高いトップスピードが出せるんだ」
「そして、彼らはポーポイズ現象(高速走行時にマシンが上下に何度も振動する現象)を起こすことなく、それができているよ」
■ハミルトンは2014年のメルセデスの強さを忘れた?
一方、メルセデスのルイス・ハミルトンが最近、レッドブルの2023年型マシンは、これまで自分がF1で見てきた中で最も強いものだと語ったことが報じられている。
しかし、元F1ドライバーのロバート・ドーンボスは、そのハミルトンのコメントはばかげていると考えている。
「彼の口からそれを聞くのは特別なことだね」
母国オランダの『Ziggo Sport(ジッホ・スポルト)』にそう語った41歳のドーンボスは、次のように続けた。
「なぜなら、彼のメルセデスは、ハイブリッドエンジンが導入された2014年には、間違いなくほかのどのマシンよりも圧倒的に強かったんだからね」
「そして、彼は単にストレートを走るだけで、ほかのマシンに対して非常に大きな差をつけていたよ」
■メルセデスにはもはや打つ手はなし?
2005年にミナルディから8レース、2006年にレッドブルから3レースに出走した経験を持つドーンボスも、ブルツ同様に、2023年のレッドブルF1マシンが速いのは単にDRSだけによるものではないと考えている。
「みんなは、レッドブルが過去2年間にわたってストレートで速かったということを忘れているよ」
「だから今、彼らはモンツァ仕様のようなウイングをジェッダ(サウジアラビアGP)に持ち込んでいるんだ」
「メルセデスは優れたマシンではない。それでは、彼らにできることは何だろうか?」
そう語ったドーンボスは、確かに、今のメルセデスに打つ手はなさそうだと次のように付け加えた。
「彼らには、ダウンフォースを得るためにより大きなウイングが必要となる。そして、それによってもっと空気抵抗が増え、ストレートでのスピードが落ちてしまうんだ」。