先週末に行われた2023年F1開幕戦バーレーンGPでは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスが1-2フィニッシュを達成し、タイトル防衛に向けて幸先のよいスタートを切っている。
■早くもエンジンの信頼性に黄信号?
一方、レッドブルの最大のライバルだと考えられているフェラーリは、バーレーンGP決勝ではレッドブルと対等に戦うことはできなかったものの、エンジントラブルさえ発生しなければ、少なくともシャルル・ルクレールが3位表彰台を確保していた可能性は高いだろう。
このことからしても、今年もマシンやエンジンの信頼性がフェラーリの大きな不安材料であることは間違いないだろう。
実際のところ、フェラーリは決勝の前にルクレールのパワーユニット(エンジン)コンポーネントのうちCE(Control Electronics/電子制御システム)を新しいものに交換している。
F1ではコンポーネントごとに1シーズンでの使用数が厳しく制限されており、CEは年間2基までの使用が認められている。そして、ルクレールの場合は開幕戦ですでに2基目を投入しているため、今後のレースで新たなCEを投入すれば、その時点で10グリッド降格ペナルティーを受けることになってしまうのだ。
■この問題に向き合う必要があると新チーム代表
今回ルクレールのマシンに起きたエンジントラブルについて質問された新チーム代表のフレデリック・バスールは次のように答えている。
「実際に何が起こったのか、もうすぐわかるだろう」
「だが、もちろんそれは残念なことだった。レッドブルとは互角に戦えなかったとしても、それでも3位にはなれていただろうからね」
そう語ったバスールは、フェラーリにとって明るい兆しが全くなかったというわけではないと、次のように続けた。
「よい点は、我々は1周で強いこと、そしてレッドブルと争うことができていることだ。しかし、レースでの戦いや信頼性の面において、我々は大きな進歩を遂げる必要がある」
「正直なところ、我々はこの週末はちょっと弱かった。だが、見ての通り、それが現状なんだ。自分たちに目隠しをするわけにはいかないし、私たちはそれに向き合い、仕事に取りかからなければならない。なぜなら、我々が優れている点に関しても、まだレッドブルとは差があるからね」
■エンジン以外にもいくつかの懸念
実際のところ、エンジンや電子制御の問題以外にも、今年のフェラーリには不安要素がありそうだ。
バーレーン・インターナショナル・サーキットで開幕戦の前週に行われていたプレシーズンテストでは、ノーズに走行中にへこんでしまう奇妙な“くぼみ”が目撃されていた。さらに、開幕戦のフリー走行1回目ではルクレールのマシンに1本パイロンで支えられたリアウイングを投入したが、そのリアウイングが大きく揺れてしまっていた。
結局、フェラーリはそのリアウイングを使用することを断念していたが、バスールはこれについて次のように説明している。
「あれはプロトタイプだったんだ」
「我々は、ここ(バーレーン)で使えるように懸命に頑張ったんだが、その準備は整わなかったよ」
バスールはさらに、プレシーズンテストでノーズのくぼみが見つかっていなければ、「そのせいでリタイアしていただろう」とも認めている。
■一番の問題はタイヤのデグラデーションだとサインツ
だが、フェラーリ移籍後3年目のシーズンを迎えているスペイン出身ドライバーのカルロス・サインツによれば、フェラーリがまず優先して取り組むべき課題はタイヤのデグラデーション(劣化による性能低下)だという。
「プッシュするとすぐにタイヤが焼けてしまうんだ」
「間違いなく、レッドブルとアストンマーティンはタイヤの消耗を小さくする工夫をしているよ」
そう語ったサインツは、次のように付け加えた。
「メルセデスを見れば、僕たちは似たようなデグラデーションになっている。その一方で、ほかの2チーム(レッドブルとアストンマーティン)はどういうわけか、違っているんだ」