現在はインディカーで活躍しているフランス出身の元F1ドライバーであるロマン・グロージャンが、2016年から2020年まで自分が所属していたハースは2023年もミック・シューマッハを続投させるべきだったと語った。
■ハースから放出された経験を持つグロージャン
アメリカンF1チームであるハースがF1参戦を開始した2016年からこのチームのために走っていた現在36歳のグロージャンだが、2017年からチームメートとして一緒に戦っていたケビン・マグヌッセンとともに2020年シーズン限りでそのシートを喪失していた。
当時資金難にあえいでいたハースが、2021年にはチームに多額の資金を持ち込むことが可能なロシア人ドライバーのニキータ・マゼピンと、フェラーリの支援を受けるシューマッハという2人のルーキードライバーを起用することにしたためだった。
だが、2022年にはロシアのウクライナ侵攻問題が発生したことでハースはマゼピンとの契約を解除し、急遽マグヌッセンを呼び戻していた。そして、2023年に向けてはシューマッハとの契約を更新せず、代わりに2019年シーズンを最後にF1フルタイムシートを失っていたベテランドライバーであるニコ・ヒュルケンベルグの起用を決定している。
■ハースがヒュルケンベルグ起用を決めた理由は?
ハースのチーム代表を務めるギュンター・シュタイナーは、2023年に23歳のシューマッハではなく35歳のヒュルケンベルグを起用することにした理由を聞かれると、次のように説明している。
「それは、我々がもはや2021年が始まったときと同じハース・チームではなくなってしまったからだ」
「今の我々には、経験がある者にステアリングを委ねる必要があるんだ」
■ハースはラインアップを変える必要はなかった?
しかし、2020年のF1第15戦バーレーンGP決勝で起こった恐ろしい事故から奇跡的とも言える生還を果たし、その後アメリカに渡ったグロージャンは、今回のハースの決断は間違っていると考えている。
「ミック・シューマッハはシーズン終盤にはいい走りをしたし、僕から見ればラインアップを変える理由は何もなかったよ」
「チームはただほかのドライバーを望んでいただけなのかもしれないね」
そう語ったスイス生まれのフランス人であるグロージャンだが、2023年に4年ぶりにフルタイムドライバーとしてF1復帰を果たすことになるヒュルケンベルグが有能なドライバーであることは認めている。
「ヒュルケンベルグはすごく才能のあるドライバーだし、以前は素晴らしい速さを見せていたよ」
グロージャンはそう語ると、次のように付け加えた。
「彼がハースで何を成し遂げられるか見てみよう。だけど、もう一度言うけれど、ドライバーの問題に関して、僕ならそういう決断はしなかっただろうね」
■ヒュルケンベルグの課題は体力面?
実際のところ、2020年と2022年に新型コロナウイルスに感染したドライバーの代役として数レースに出走し、非常にいいパフォーマンスを見せたことがあるものの、3年ものブランクがある35歳のヒュルケンベルグが2023年にハースのF1マシンでどれほどの働きを見せるかどうかはまだわからない。
今年のF1最終戦アブダビGPの翌週に行われたシーズン後テストでハースの2022年型F1マシンを初めて体験したヒュルケンベルグだが、テスト終盤には自分の身体が“デグラデーション(性能低下)”を起こしていたとコメントしたこともあり、全24戦もしくは23戦という厳しいスケジュールで行われる2023年にうまく対応できるのかどうかを懸念する声もあるようだ。
しかし、シュタイナーは心配していないようだ
「バーレーンではプレシーズンテストもある。そのころには、彼も対応できるようになっていると思う」
「F1マシンは体力的にはかなり厳しいものだし、彼がそれに慣れるには時間もかかるだろう。というのも、筋肉を鍛える唯一の方法はマシンを走らせることだからね」
そう語った57歳のシュタイナーは、次のように付け加えた。
「彼の体力はすでに問題なかったが、我々としてもしばらく休んでいて復帰したときにすぐにシャープさを発揮できるかどうかという疑問は持っていたよ。でも、直前にやってきた彼が示した結果を見れば、彼はかなりよかったよ」
■2022年のアプローチを反省するシューマッハ
一方、2シーズンを終えたところでハースのシートを失ってしまったシューマッハは、最近の噂によれば、2023年にはメルセデスのサードドライバーを務めながらF1復帰のチャンスを探っていくことになりそうだ。
昨年は同時にF1デビューを飾ったマゼピンを上回る結果を残して見せたシューマッハだが、今年は開幕直前に経験豊富なマグヌッセンが加入したことが大きなプレッシャーとなっていたのかもしれない。
「彼(マグヌッセン)は大きな期待を持つことなく今シーズンに臨んだ。彼には失うものは何もなかったからね。でも、僕は違ったよ」
そう語ったシューマッハは、2022年シーズン序盤にクラッシュを起こしたときに、その後もっと慎重にやればよかったのかもしれないと示唆するように、次のように付け加えている。
「今考えると、ああいう兆候があったことを考えれば、僕の取り組み方は間違っていたのかもしれないね」