フェラーリのチーム代表を務めるマティア・ビノットが、2023年型F1マシンの開発に焦点を切り替えたことが、シーズン終盤にフェラーリのペースが落ち込んだ理由だと認めた。
■メキシコGP決勝ではレッドブルに1分差をつけられたフェラーリ
先週末に行われた今季のF1第20戦メキシコGPでは、フェラーリにこれまでのような速さがなく、決勝ではレッドブルやメルセデスのペースについていくことができなかった。5位フィニッシュのカルロス・サインツ、そして6位フィニッシュのシャルル・ルクレールがチェッカーフラッグを受けたのは、優勝したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)からなんと1分ほども遅れてのことだった。
■2022年型マシンの開発を止めたチームも多いはずだとビタリー・ペトロフ
フェラーリが遅かったのは、標高約2300メートルに位置するエルマノス・ロドリゲス・サーキットの空気密度の低さが原因だったのではないかと考えた者もいたようだが、ロシア出身の元F1ドライバーであるビタリー・ペトロフは、本当の理由は違うところにあったのではないかと考えている。
「フェラーリに何が起きているのかはよくわからないよ」
「おそらく、彼らは来シーズンに集中する必要があると理解したことから、クルマの開発を止めたのではないだろうか」
「多くのチームが同じような戦術を選んでいると思うよ」
そう語ったペトロフは、最近メルセデスがレッドブルとの差を縮めてきていることに言及しながら、次のように付け加えた。
「おそらくレッドブルもそうなんじゃないかな。ほかのチームがスピードの面でリーダーとの差を縮めているのがわかるからね」
■2023年に新たなチャンスを期待するカルロス・サインツ
ともあれ、フェラーリがすでに焦点を2023年に合わせているのは確かだろう。スペイン出身ドライバーであるサインツの視線もすでにフェラーリドライバーとして迎える3年目のシーズンに向けられている。
「新しい年になり、新しいマシンになり、フロアのルールも新しくなる。僕たちにとっては新しいチャンスだ」
「これは僕たちにとって新しい機会となる。今シーズンの結果から結論を導き出し、チームが素晴らしい新車を作り上げてくれると信じているよ」
そう語ったサインツは次のように付け加えた。
「僕には戦う心構えができているし、メルセデスの進歩も楽しみにしているよ。彼らもこの戦いに加わることになりそうだからね」
■2023年に向けて2022年型マシンの開発継続が必要だったメルセデス
一方、2022年シーズン前半にレッドブルとフェラーリに大きな差をつけられていたメルセデスに関しては、まだ2022年型マシンの開発を完全にストップしてはいないようだ。
これは、“ノーサイドポッド”とも呼ばれる斬新なマシンコンセプトを導入したものの、それがどうしてうまく機能しなかったのかという問題を理解することなく、2023年型マシンの開発に移行することが難しかったためのようだ。
メルセデスのあるエンジニアは、このことに関して次のように語っている。
「ファクトリーでは速そうに見えたコンセプトがどうしてサーキットでは機能しなかったのかを理解するために、資金面だけでなく、多くのリソースを無駄にするリスクを負ったんだ」
「W13(2022年型マシン)を完全に理解したかったんだ。まったく異なるW14(2023年型マシン)に全速力で取り組めるようにするためにね」
メルセデスとしては、2022年型マシンの“コンセプトの問題点”をよりよく理解するために、そのマシンの開発を長く続けることが必要だったわけだが、その結果として、メルセデスが最終的にコンストラクターズランキングでフェラーリを逆転して2位に浮上する可能性もあると考えられている。
■すでに2022年型マシンの開発は止めていたとフェラーリのボス
そのフェラーリに関しては、チームを率いるビノットが、自分たちがメキシコで苦戦した理由はペトロフの推測の通りだと認めている。
「我々がかなり早い時期にクルマの開発を中止し、2023年に集中しようとしたのはわかっていることだ」
「とにかく、開発速度についてはあまり気にしていないよ。我々がいつ開発をやめたのかがわかっているからね」
「我々が開発を止めた一方で、メルセデスはもっとマシンを開発していた。だから、彼らのことはあまり気にしていないんだ」
そう語ったビノットは、次のように締めくくっている。
「確かに、もっと引き出せるだけのポテンシャルがあったはずだ。しかし、バジェットキャップ(チーム予算上限)によってそれを行うための財政的余裕がなかったんだ」。