メルセデスは、先週末にオースティンで行われた今季のF1第19戦アメリカGPに新たなフロントウイングを持ち込んでいたものの、それは違法ではないかとの憶測もあったためか、実際にそれを使用することはなかった。
だが、メルセデスはその新フロントウイングを今週末のF1メキシコGPに投入することを決めたようだ。
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■違法の疑いが指摘されていたメルセデスの新ウイング
当初メルセデスがアメリカGPに持ち込んだ新フロントウイングにはウイングレットと呼ばれる小さな空力パーツが備えられていた。しかし、今回メキシコに持ち込まれたフロントウイングからはそれが取り除かれているようだ。
アメリカに持ち込まれたウイングに備えられていたウイングレットは、タイヤに当たる気流を逃がすための“アウトウォッシュ効果”を生むものだったと考えられており、ライバルチームたちは、それは2022年ルールの精神に反するものではないかと疑いの目を向けていたのだ。
■アメリカで新ウイングを使用しなかったのは別の理由?
しかし、メルセデスのエンジニアリング責任者であるアンドリュー・ショブリンは、メルセデスがアメリカでこのウイングを使用しなかったのはそれが違法だったためではなかったのだと次のように語った。
「オースティンでそれを使わなかったのは、1つしかなかったからなんだ」
「つまり、もしも予選で破損したら、レース前にウイングの仕様を変更しなければならなくなり、その影響を受けたドライバーはグリッドの最後尾につくことになっただろう」
ショブリンによると、メルセデスはメキシコにはスペアを用意してきており、「金曜日にそれを試してみるつもり」だという。
■FIAの態度が変わったのだとメルセデスの技術責任者
しかし、メルセデスのテクニカルディレクターを務めるマイク・エリオットは、それが合法なのかどうかアメリカGPの時点では明らかになっていなかったのも事実だと認めている。
エリオットによれば、F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)は、アメリカGPの前に行われた“CAD(キャド)レビュープロセス”によって、そのフロントウイングはレギュレーション的には問題はないと判断していたのだという。
「その後、彼らが戻ってきて言ったんだ。『これについてはよくわからない』とね。しかし、私はこれに関しては議論の余地があると思っている」とエリオットは明かしている。
ともあれ、メルセデスがメキシコにおいて一部修正が施された新フロントウイングをテストすることになるのはどうやら間違いなさそうだ。
■打倒フェラーリが今季最後の目標
一方、F1関係者の中には、コンストラクターズ選手権において現在フェラーリを53ポイント差で追いかける形となっているメルセデスだが、もしもフェラーリを逆転してランキング2位となっても、レギュレーションによって2023年の風洞テスト時間が制限されるだけであり、メルセデスは今季はランキング3位でよしと考えているのではないかと疑っている者もいるようだ。
しかし、ショブリンによれば、メルセデスはあくまでもフェラーリに勝つことを目指しているのだという。
そして、もしもその戦いに敗れ、その結果として来季の空力開発面で有利な条件を得られることになったとしても、ショブリンに言わせれば、それは「ちょっとした残念賞」のようなものでしかないという。