F1最高経営責任者(CEO)のステファノ・ドメニカリが、伝統レースであるドイツGPがカレンダーから消えたままになっているのは、地元にF1開催を復活させようという熱意が不足しているのだと示唆した。
かつてはニュルブルクリンクやホッケンハイムに大勢のファンを集めて開催されていたF1ドイツGPだが、2019年の開催を最後にF1カレンダーから消えてしまっている。
新型コロナウイルスの影響を受けた2020年にはニュルブルクリンクでアイフェルGPが開催されたものの、2021年と2022年にはドイツ国内でF1は開催されていない。
F1でも長い歴史を持つドイツGPだけに、その復活を望む声も多いのだが、実際のところドイツ国内にはそのための推進力がないというのが現状のようだ。
■ドイツGPのために一番頑張っているのは私だとドメニカリ
2020年からCEOとしてF1を率いているステファノ・ドメニカリは、ドイツの『Der Spiegel(シュピーゲル)』に次のように語った。
「もし誰かドイツGPのために働きかけている者がいるとしたら、それは私だよ」
「我々と一緒に腰を落ち着けて建設的な提案をしてくれるドイツの代表者はいないよ」
■ドイツ出身ドライバーがF1からいなくなる可能性も
実際のところ、ドイツGPの復活に向けては、さらにネガティブな要素も少なくない。
例えば、レッドブル時代に4年連続F1チャンピオンとなる快挙を達成した実績を持つドイツ出身のセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)が走るのは今年が最後となる。
さらに、現在グリッドに並んでいるもうひとりのドイツ人ドライバーであるミック・シューマッハ(ハース)に関しては、2023年のシートが確保できるかどうか、かなり不透明な状況だ。もしシューマッハが今季限りでF1シートを失うことになれば、F1にドイツ人ドライバーがひとりもいないという状況となってしまう。
■高騰するF1開催権料を支払う余裕がないドイツ
こうした中、ドイツ国内のテレビ視聴率も低迷していると伝えられており、ホッケンハイムやニュルブルクリンクの関係者たちは、高騰するF1の開催権料を支払う余裕はないとしている。
ドメニカリはこの問題に言及しつつ、次のように続けた。
「ヨーロッパとほかの地域では、レースの価値が違うことは我々もわかっている」
「ピカソが欲しければ、そのために大金をはたかなければならないんだ」
ドメニカリは、「非常に多くのファン層を持つグランプリは、ビジネスモデルになりうる」と続け、次のように付け加えている。
「私のドアはどんな会話に対しても広く開かれているよ」
■ドイツでは環境問題もF1の逆風に
一方、ドイツ出身の元F1ドライバーであるティモ・グロックは、ドイツにおける自動車レース文化が近年は衰退の一歩をたどっていることが問題の一部だと考えている。
「問題は、現在ではほとんど誰もモータースポーツに参加したがらないことだ。それはモータースポーツが気候に有害で、後ろ向きだと考えられているためだ」
かつてトヨタやヴァージンで活躍した現在40歳のグロックは、『Auto Bild(アウト・ビルト)』にそう語ると次のように付け加えた。
「それが基盤全体を破壊してしまったんだ」
■ドイツGP復活のきっかけになるか、2026年のアウディ参戦
こうした中、F1モータースポーツ担当マネジングディレクターであるロス・ブラウンは、フォルクスワーゲン傘下にあるアウディが2026年から参戦するというニュースが、こうした状況を改善する一助となることを期待しているようだ。
「私は、それがドイツGPの復活につながることを期待しているよ。ドイツGPが現在カレンダーにないのは不満だからね。それが将来に向けた我々の大きな目標の一つだ」
ドイツの放送局『Sport1(シュポルト1)』にそう語った67歳のブラウンは、次のように付け加えている。
「だからこそ、ミック・シューマッハがF1でのキャリアを続けることも非常に重要なんだ。F1の技術が魅力的で重要であるように、子供たちはハンドルを握るヒーローたちのポスターを壁に貼るんだ」。