現在、2023年にアルピーヌで誰がエステバン・オコンのチームメートを務めることになるのかという問題に非常に大きな注目が集まっている。
■2023年に向けてガスリーの獲得を目指すアルピーヌ
フェルナンド・アロンソが来季アストンマーティンへの移籍を発表したことから、アルピーヌではリザーブドライバーを務めている2021年のF2チャンピオンであるオスカー・ピアストリを2023年に昇格させようとした。ところがピアストリはすでにマクラーレンと契約を結んでしまっていたのだ。
このため、アルピーヌは急遽もうひとつのシートに座るドライバーを探さなくてはならない状況となったわけだが、最近ではレッドブルのセカンドチームであるアルファタウリに所属するピエール・ガスリーの獲得に動いている。
フランス人ドライバーのガスリーも、近い将来トップチームであるレッドブルに復帰するチャンスが消えたことから、母国の自動車会社であるルノーのF1ワークスチームへの移籍には前向きだと伝えられている。
■ガスリーの移籍はハータのF1デビューが認められた場合にのみ可能に
だが、それが実現するためには、アルファタウリがガスリーの後任ドライバーを見つけられることが条件となっており、現在ガスリーを契約下に置くレッドブルではその代役として現在インディカーで戦っているアメリカ人若手ドライバーのコルトン・ハータに白羽の矢を立てている。
だが、22歳のハータは現時点ではF1出走に必要なスーパーライセンスを取得するのに必要なポイントを有しておらず、レッドブルでは特例的運用を認めるようFIA(国際自動車連盟)に働きかけているようだ。
しかし、一部のチームだけでなく、F1 最高責任者のステファノ・ドメニカリやFIAも、インディカーのドライバーを来年アルファタウリからF1デビューさせるためにスーパーライセンスの資格認定基準を曲げることには否定的だと伝えられている。
現時点では、こうしたことから、2023年にハータがアルファタウリでF1デビューできる可能性は事実上ゼロだと考えられており、そうなるとガスリーのアルピーヌ移籍も不可能だということになりそうだ。
アルファタウリはピエール・ガスリーが“体調不良”のために8日(木)に予定されていた第16戦イタリアGP(11日決勝)に向けた記者会見を欠席すると発表したが、実はそれはガスリーがメディアからこの問題に関する質問をぶつけられることを避けるためだったのではないかと疑っている者もいるようだ。
■現在のスーパーライセンスポイント制度には問題があるとレッドブル首脳
ともあれ、レッドブルとアルファタウリのドライバープログラム責任者としても知られるヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)は、ハータがF1にステップアップできないのは現行システムの方に問題があるのだと主張している。
「本当に速いレーシングカーはインディカーや日本のスーパーフォーミュラにあり、内部での競争も激しいんだ」
「彼らは我々のジュニアシリーズに比べて明らかに過小評価されているよ」
ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』にそう語った79歳のマルコは、積極的にアメリカ史上に進出しようとしているF1にとってもハータの存在は意味のあるものになるはずだと次のように付け加えている。
「F1もアメリカ人がいることで満足できると思うよ」
■現時点ではレッドブルのジュニアドライバーには人材不足
しかし、マルコがガスリーの後任としてアメリカ人ドライバーに目を向けているのは、現在レッドブルのジュニアドライバーたちの中にはすぐにF1へステップアップさせることができるドライバーが誰もいないためであることも明らかだ。
今季、F2では数名のレッドブルジュニアドライバーが戦っているが、現時点でのランキングではニュージーランド人ドライバーのリアム・ローソンが5番手、日本人ドライバーの岩佐歩夢が6番手、インド人ドライバーのジェアン・ダルワラが9番手に位置している。
だが、マルコはローソンやダルワラのF2での結果には失望していると伝えられており、岩佐に関しても「彼には2年目のF2シーズンが必要だ」としている。
一方、マルコは現在F3で戦っているフランス国籍ドライバーのイザク・アジャールを高く評価しており、現在ランキング2番手に位置している17歳のアジャールを「プロストのようなドライバー」だと語り、大きな期待を寄せているという。しかし、もちろん現時点においてはアジャールを2023年にF1デビューさせることも不可能だ。
こうした理由から、マルコはFIAに対して、明らかにF1にステップアップする資格があるハータを例外として認めるよう強く求めているわけだ。
■アルピーヌの現実的候補ドライバーは?
実際のところ、ハータのF1デビューが特例として認められる可能性は非常に小さく、現実的にはガスリーが2023年もアルファタウリで走ることに変わりはないものと考えられており、アルピーヌはガスリー以外の候補ドライバーに絞るしかないことになりそうだ。
そうなった場合、うわさではマクラーレンとの契約を解除されることになったダニエル・リカルドの復帰や、ハース残留が難しそうだと考えられているミック・シューマッハの加入などが考えられるだろうと言われている。
また、現在F2ランキングトップに位置している22歳のブラジル人ドライバーであるフェリペ・ドゥルゴビッチも候補になり得るだろうと伝えられている。
ドゥルゴビッチはアルピーヌの親会社であるルノーの支援を受けているだけでなく、ブラジルの大手銀行を個人スポンサーとして持っているようだ。
また、今週末のモンツァでアストンマーティンからセバスチャン・ベッテルに代わって金曜フリー走行1回目に出走することになるメルセデス所属ドライバーのニック・デ・フリースも、先週末にオランダGPが開催されたザントフォールト・サーキットでアルピーヌの首脳陣と会話しているのが目撃されている。
ともあれ、アルピーヌの2023年ドライバーラインアップがどういう決着を見せることになるのかによってほかのドライバーの去就にも影響が及ぶことから、その成り行きに目が離せなくなりそうだ。