F1チームでは、統括団体であるFIA(国際自動車連盟)と共に、ドライバーの後方視界を改善するために通常よりも大きなサイドミラーのテストを行っている。
すでに、今季の第9戦カナダGP以降、いくつかのチームが独自に設計した大型ミラーをフリー走行でテストしており、そのデータをFIAに提供している。
例えば、レッドブルは、フリー走行時にコックピットの片方に通常使用しているミラーを装着するとともに、反対側にはより大きなミラーを装着して直接比較したりしたようだ。
■現状では斜め後方の視界が極端に制限
FIAの技術責任者を務めるニコラス・トンバジスは、このテストに関して、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に対し、「斜め後方のエリアに関して、現状では視界が極端に制限されている」ためだと語っている。
これまでに、メルセデスはベルギーGPが開催されたスパ・フランコルシャン・サーキットで大型化したミラーを試しており、アルピーヌ、マクラーレン、ハースもオランダGPに向けて423×187mmの寸法を持つミラーをテストしたと伝えられている。
■ミラーを大きくすれば前方視界はさらに悪化
だが、トンバジスは、ミラーを大きくすることによる副作用もあることを認めている。それは、後方視界が改善される一方で、逆に前方視界を遮るエリアが大きくなることだ。
「ミラーが邪魔になってドライバーの前方視界が悪くなるのは避けなくてはならない」
かつてフェラーリF1チームでデザイナーを務めていたトンバジスはそう語ると次のように付け加えた。
「それを装着できるエリアはわずかしかないからね」
実際のところ、大きめのミラーをテストしたルイス・ハミルトン(メルセデス)は、後方視界がそれほど改善されない一方で前方視界がさらに損なわれると不満を漏らしたと伝えられている。
■ただでさえ視界が悪くなっている2022年型F1マシン
新たな技術レギュレーションが導入された2022年のF1マシンだが、18インチホイールが導入されたことに加え、フロントタイヤの上部にカバーが設けられたことから、ドライバーの視界は昨年よりもかなり悪くなっていると伝えられている。それに加えてミラーが大きくなれば、ドライバーにとってはさらに運転しにくいマシンとなる可能性もありそうだ。
ともあれ、この大型ミラーのテストは、今後のグランプリでも継続される予定となっている。