フェラーリのチーム代表を務めるマッティア・ビノットが、先週末にスパ・フランコルシャン・サーキットで行われた今季のF1第14戦ベルギーGPで予想もしなかったほどレッドブルとのパフォーマンス差が開いたものの、これはFIA(国際自動車連盟)がこのレースから“ポーポイズ現象”対策のためのルール(技術指令)を施行したこととは無関係だと主張した。
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■F1ベルギーGPから施行されたポーポイズ現象対策技術指令
2022年に導入された新たなF1技術レギュレーションにより、今年のF1マシンはシャシーそのものがダウンフォースを発生させるグラウンドエフェクト効果を持つものとなっている。
だが、そのグラウンドエフェクトの副作用として、マシンが高速走行時に激しく上下に振動するポーポイズ現象に悩まされることとなってしまった。
メルセデスは、これに何らかの対策を施さないとドライバーの健康問題にもつながるリスクがあるとして、FIAに対して対策を講じるよう求めていた。
レッドブルやフェラーリはそうした対策ルール導入には反対していたものの、FIAはこの問題への対策として一定の技術指令を発令することを決定。そして、先週末のスパでそれが初めて導入されていた。
■“翼が与えられた”レッドブルのパフォーマンスが向上
実際のところ、その対策ルールが導入された場合、今年はレッドブルやフェラーリに差をつけられてしまっているメルセデスがその恩恵を受けられるものと考えられ、逆にレッドブルやフェラーリのパフォーマンスが相対的に低下することになるのではないかと予想されていた。
ところが、蓋を開けて見れば、レッドブルF1マシンがライバルたちを寄せ付けない強さを発揮。年間規定数を超えるエンジンコンポーネント投入によるグリッド降格ペナルティを受けたマックス・フェルスタッペンが14番グリッドからスタートし、最終的にはポールポジションからスタートし3位となったフェラーリのカルロス・サインツに約27秒、4位のジョージ・ラッセル(メルセデス)に約29秒もの大差をつけて今季9勝目を飾っている。
この規制の導入を強く働きかけていたメルセデスだが、ベルギーGP予選ではルイス・ハミルトンもラッセルも、最速タイムを刻んだフェルスタッペンに2秒ほどの大差をつけられてしまっていた。
この結果を受けてにんまりしているのは、レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーだ。
「彼らはもっと頻繁にこのような指令を出すべきだね」
笑いながらそう語ったホーナーは、スパ・フランコルシャンで施行された新たな規制は「我々に翼を与え、我々を傷つけたいと考えていたほかのチームを減速させたようだ」と付け加えている。
フェルスタッペンの父親であり、自身も元F1ドライバーであるヨス・フェルスタッペンも、スウェーデンのストリーミングサービス会社『Viaplay(ヴィアプレイ)』に次のように語っている。
「これらの変更で一番悩まされるのは我々だと考えられていた。だが、今後はほかのチームたちがもっと悩むことになると思うよ」
■ベルギーでのパフォーマンスとポーポイズ対策は無関係だとフェラーリ
一方、フェラーリを率いるビノットは、ベルギーGP決勝後に次のように語っている。
「技術指令の効果は、フェラーリに関する限り、まったく無視できるものだ」
「なぜ我々のパフォーマンスが非常に悪かったのかという疑問に対する答えはそれではないよ」
ベルギーGP決勝をレッドブル勢に次ぐ3位で終えたカルロス・サインツも、今回の規制の影響は「正直なところ何もなかった」とコメントしている。
「僕は、サーキット特性によるものだと思う。僕らのパッケージはこういうサーキットには向いていないんだ。だけど、ザントフォールト(次戦オランダGP/9月4日決勝)の後で分かるだろう」
そう語ったスペイン出身のサインツは次のように付け加えている。
「僕の感覚では、あくまで感覚に過ぎないけれど、僕たちはここでの週末にはちょっと休みをとっていたって感じだったよ」。