2026年に導入される予定となっている新F1エンジンレギュレーションの確定が遅れていることから、エンジンサプライヤーとしてF1参入を計画しているフォルクスワーゲン傘下のポルシェとアウディ、そしてF1はこの計画が頓挫してしまう可能性もあるのではないかと懸念し始めているとも伝えられている。
伝えられるところによれば、F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)には、すでに大幅に遅れている次期F1エンジン規則の詳細を早く発表するよう圧力がかけられているという。
また、リバティ・メディアが所有するF1商業権管理組織であるFOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)は、7月下旬にレギュレーションの投票を行い、その後15日以内にアウディとポルシェが2026年からの参戦を正式に申請するよう働きかけているようだとも言われている。
実際のところ、本当であれば遅くとも6月には確定していなければならなかったはずの新F1エンジンレギュレーションが、現時点では具体的な見通しが立たないほどに遅れてしまっているのはどうしてなのだろうか?
■「我々は歩み寄った」とメルセデスのボス
メルセデスF1チームを率いるCEO兼代表のトト・ヴォルフは、エンジンレギュレーションの確定が遅れているとしても、ポルシェとアルディがいまだに正式参入を発表しない理由がわからないとドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に次のように語った。
「レギュレーションに依存してそのような決定を下すことは不可能だよ。我々のビジネスではレギュレーションは常に変化しているんだからね」
「我々は新規参入者の決断を期待することができる。とりわけ、我々は彼らに対して大きく歩み寄ったんだからね」
■既存エンジンメーカーの遅延行為を疑うロス・ブラウン
現在のF1エンジンメーカー4社のうち、メルセデス、フェラーリ、ルノーは新たなエンジンレギュレーションの中にベンチテストに関する新たな制限を加えるよう要求していることが明らかになっている。
だが、F1モータースポーツ担当マネジングディレクターのロス・ブラウンは、これはあからさまな遅延戦術ではないかと疑っているようだ。
「コストに上限が設けられているのだから、ベンチテスト時間数を気にする必要はないだろう」
そう語った67歳のブラウンは次のように付け加えた。
「もし、そこにさらに資金を注ぎ込めば、ほかのところで節約しなければならないんだからね」
また、既存のエンジンメーカーたちは、エンジンピストンの材質をスチール(鋼鉄)としてレギュレーションに明記することを望んでいるものの、ポルシェとアウディはアルミニウムとすることを望んでいるとも伝えられている。
■まだ議論すべき細目が残されているだけだとフェラーリのボス
フェラーリのチーム代表を務めるマッティア・ビノットは、自分たちを含め、現在のF1エンジンメーカーたちは、単にポルシェやアウディのF1活動を困難なものにしようとしているわけではないと主張している。
「明らかにしておく必要があると思うが、アウディとポルシェがF1に参加することについて我々は非常に前向きだし、彼らが満足できるようにできることは何でもしてきたと思っている」
「我々はMGU-H(熱エネルギー回生システム)を取り除くことにしたが、それは彼らがF1に参加するのを助けるために行ったことだ。たとえ、それを外すことが我々にとってベストな選択肢ではなかったとしてもね」
そう語ったビノットは、レギュレーションの正式確定が遅れているのは、単に「まだ準備が整っていない」ためだと次のように付け加えている。
「まだ解決していない細目がある。そして、その未解決の細目に取り組み、議論し、合意することが必要なんだ」。