伝えられるところによれば、F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)が、現在のインフレ状況を鑑み、F1チームに一定額を支払うことを提案したようだ。
現在のF1では各チームが年間に使うことができる費用に上限値(バジェットキャップ)が設けられており、今年は1億4,000万ドル(現在のレートで約189億円)が上限として設定されている。
しかし、新型コロナウイルス問題や、ロシアのウクライナ侵攻といった想定外の出来事により、世界的に物価が上昇してきており、F1の世界では特に部品や材料の調達、各地を転戦する際の輸送費用などの高騰に苦しんでいる。
こうした中、レッドブル、メルセデス、フェラーリなどは、現在のインフレ危機はこれ以上ないほどに深刻だと主張し、今年のバジェットキャップを緩和するべきだと主張している。
■半分のチームがバジェットキャップを超えるだろうとレッドブル
レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、この問題に関して次のように語った。
「この状況が続けば、50パーセントほどのチームが年末には上限を超えてしまうだろう」
「我々は、法廷や、FIAを前にしてパリで選手権が決まることを望んではいない」
■FIAが全チームに一定額の追加資金支給を提案
こうした中、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』が伝えたところによれば、水面下で行われている財政関連の会議において、FIAがこの問題の解決策を提案したという。
同誌によれば、その提案内容は「F1はすべてのチームに追加資金を支払い、それはバジェットキャップには含まれない」というものだという。ただし、「その追加資金は、収益を分配する際の分母から差し引かれる」ということのようだ。
そして、その各チームに支給される追加資金額は300万ドル(約4億円)、あるいは、現在の上限値の3パーセント(約5億6700万円)になるのではないかと考えられているようだ。
もともとチーム予算が設定されたバジェットキャップのレベルにまで届かない小規模チームたちは、バジェットキャップの緩和には反対の意向を示していた。そうすれば大規模チームたちが有利になるだけだからだ。
■適切な案だと歓迎するアルピーヌやハース
しかし、今回報じられたFIAの妥協案に関しては、どのチームも前向きにとらえているようだ。
ルノーの事実上のワークスF1チームであるアルピーヌも単純なバジェットキャップ引き上げには反対していたものの、チーム代表を務めるオットマー・サフナウアーはこの妥協案に関して次のように語っている。
「それによって全員が同じ程度の恩恵を受けるのであれば、我々は受け入れるよ」
また、アメリカンF1チームのハースでチーム代表を務めるギュンター・シュタイナーも次のように語り、賛成の意思表示を行っている。
「それは適切な妥協案だろう。予算制限に達しないチームも恩恵を受けることになるのだからね」
■残るのはその資金を工面するF1の判断
しかし、ステファノ・ドメニカリがCEOとして率いるF1がこのFIAの提案をそのまま受け入れるかどうかはまた別問題かもしれない。
伝えられるところによれば、F1の商業権を管理するFOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)の関係者はこの問題について次のように語ったという。
「現在検討しているところだ。結局のところ、ここで分配されるのは我々の金だからね」。