今年は15年ぶりのF1ドライバーズタイトル、14年ぶりのF1コンストラクターズタイトル獲得を目指すフェラーリだが、その最大の障害となるのは2022年型マシンの信頼性問題のようだ。
実際のところ、シーズン序盤にドライバーズランキング首位に立っていたシャルル・ルクレールは、第6戦スペインGPと先週末に行われた第8戦アゼルバイジャンGPの2レースをマシントラブルによるリタイアで終えたことで、現時点ではランキングも3番手に下がってしまっている。
その一方で、開幕戦バーレーンGPと第3戦オーストラリアGPをマシントラブルによるリタイアで終えていた2021年のF1チャンピオンであるマックス・フェルスタッペンだが、その後はレッドブル2022年型マシンに大きなトラブルはなく、その2レースを除く6レースではここまでに優勝5回、3位1回と非常に安定した強さを見せている。
元F1ドライバーであり、レッドブルのセカンドチームであるトロロッソ(現アルファタウリ)の共同オーナーを務めていたことでも知られるゲルハルト・ベルガーは、母国オーストリアの『Kronen Zeitung(クローネン・ツァイトゥング)』紙に次のように語っている。
「レッドブルはシーズン当初にいくつか信頼性の問題を抱えていた」
「今はフェラーリの番だ」
■ホンダ製F1エンジンには信頼性の不安なし
実際のところ、最近のレッドブルにも技術的トラブルが全くなかったわけではない。だが、マシンを止めなくてはならないほど重大なものはなく、比較的軽微なものだったようだ。
今年からレッドブル・パワートレインズというブランド名が付けられているホンダ製F1エンジンの信頼性について質問されたレッドブル首脳のヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)は、「フェラーリとは違って、深刻なものは何もないよ」と答えている。
実際のところ、バクーで行われたアゼルバイジャンGP決勝ではルクレールの駆るフェラーリF1マシンのエンジンが大きな白煙を上げるという、最近ではあまり目にしない光景が展開されていた。だが、ドイツのモータースポーツ専門誌である『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』は、レッドブルのエンジンには現時点では「ほとんど摩耗の兆候が見られない」と報じている。
■ライバルに大差をつけたレッドブルとフェルスタッペン
全22戦で争われる2022年のF1だが、約3分の1となる8戦が終わった時点では、ドライバーズランキングではレッドブルのフェルスタッペンが150ポイントを稼いでいるのに対し、フェラーリのルクレールは116ポイントで、現時点では34ポイントに差が開いている。
さらに、コンストラクターズランキングはレッドブルの279ポイントに対し、2番手のフェラーリは199ポイントで、シーズン序盤には想像もできなかったであろう80ポイントもの差がついてしまっている。
■あらゆるチャンスを利用することが大事だとレッドブル首脳
現時点では、レッドブルが圧倒的に有利な状況となっているのは確かだが、マルコはまだフェラーリを軽視するわけにはいかないと気を引き締めている。
「ここ5レースでは、我々の方に大きな流れがきている。だが、それは再び変わる可能性もあるよ」
「フェラーリが問題を解決できれば、彼らには間違いなく強いマシンがある」
そう語った79歳のマルコは次のように付け加えた。
「それゆえ、我々は彼らが与えてくれるあらゆるチャンスを逃さないようにしなくてはならないんだ」
■フェラーリにはもう余裕はないとベルガー
ベルガーも、今年はこれからもレッドブルとフェラーリがしのぎを削り合う戦いが続いていくのは間違いないと考えているようだ。
「今年はずっとこういう形が続くだろう。だから、両チームとも常に改善していかなければならないことがわかっているよ」
そう語ったベルガーだが、フェラーリよりもレッドブルの方に余裕があるのは間違いないだろうと次のように続けている。
「フェラーリはすでに限界にきていると思う」
「予選では、フェラーリの方が少しパフォーマンスの面でアドバンテージを持っているのがわかる。だが、彼らもこれからはあちこちでネジをひとつかふたつ緩めなくてはならないだろう。完全に壊れてしまうのは一番痛いことだからね」
「あまりにも多くのトラブルを抱える余裕はないよ」
F1現役時代にはベネトン、マクラーレン、フェラーリなどで活躍し、トータル10勝をあげた実績を持つ62歳のベルガーは次のように付け加えている。
「レッドブルはF1タイトルを争うことに慣れている結束力の強いチームのように見える。一方、フェラーリにとってそれはかなり昔のことだし、それほど自信はないみたいだね」
ともあれ、フェラーリにとっては、どれだけ早く信頼性問題を解決できるかが2022年のタイトル争いを続けていくための最重要課題であることは間違いないだろう。