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「ポーポイズ現象」を巡るメルセデスの要求は通らないだろうとノルベルト・ハウグ

2022年06月16日(木)0:02 am

メルセデスの元モータースポーツ責任者であるノルベルト・ハウグは、現在F1チームたちを悩ませているポーポイズ現象をなくすための技術ルール変更を求めているメルセデスの試みは失敗に終わると考えているようだ。

■ポーポイズ現象をなくすためのルール修正を求めるメルセデス

新たな技術レギュレーション導入により、今季のF1はシャシーそのものがダウンフォースを発生させる“グラウンドエフェクト効果”を持つ新世代マシンで戦われている。

だが、そのグラウンドエフェクト効果の副作用とも言うべきポーポイズ現象に悩まされているチームやドライバーが多いのも事実だ。

ポーポイズ現象とは、高速走行時にマシンが上下に大きく振動する現象のことだ。そして、その振動が大きければ大きいほどドライバーの身体にかかる負担も大きくなってしまう。

そして、特にこの現象が強く発生しているチームのひとつがメルセデスであり、先週末にバクーで開催された第8戦アゼルバイジャンGP決勝では4位でフィニッシュしたルイス・ハミルトンが痛みを訴えてなかなかマシンから降りることができなかったほどだ。

メルセデスは、このままこの問題を放っておけば、いつか大きな事故が起こったり、ドライバーが身体に深刻なダメージを受けたりするリスクがあることから、このポーポイズ現象が起こらないような形に技術ルールを修正すべきだと主張している。

■この問題はチームが解決すべきだとレッドブルのボス

しかし、現在2022年のタイトル争いをリードしているレッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、そうした要求を受け入れることはできないと主張している。

「彼らはいつでもマシンに厚いフロアをネジ止めすることもできるんだ。彼らがそう望むのであればね」

そう語ったイギリス出身のホーナーは次のように続けた。

「そして、どの程度の車高でマシンを走らせたいかは、我々全員が自分自身で決めることだ。それが第一の、そして最もシンプルな解決策だろう」

「もちろん、解決策はあるよ。ただ、そうすればパフォーマンスを犠牲にすることになるけどね」

「だから、一番簡単なのは文句を言うことなんだ」

■メルセデスの要求は受け入れられないだろうとマーティン・ブランドル

元F1ドライバーであり、現在はテレビでF1解説者を務めるマーティン・ブランドルは、メルセデスの主張に同意してルール変更を求めるチームはほかにはいないだろうと次のように語っている。

「ルイスとジョージ(ラッセル)が経験していることを軽視するつもりはないよ。だが、ほかのチームにメルセデスを助けるためにルールを変えてくれと頼むのは、七面鳥に対してクリスマスに賛成票を投じるよう頼むようなものだよ」

■レッドブルが指摘するようにそのルール変更は不公平だとハウグ

2012年シーズンまでメルセデスのモータースポーツ活動を統括していた69歳のハウグも同意見だ。

「ルール変更が行われるとは想像できないよ」

母国ドイツの『Sky Deutschland(スカイ・ドイチュランド)』にそう語ったハウグは次のように続けた。

「とりわけ、それは不公平になるとレッドブルがすでに指摘していることもあるしね」

「メルセデスの問題が短期間で解決できるとは思えないよ」

■本当の意味で「一番揺れている」のがメルセデス

ハウグは、2014年以降最強を誇っていたメルセデスF1エンジンのアドバンテージがなくなったことから、エンジニアや設計担当者が2022年の新しい技術ルールに向けてマシンに「革命的な空力コンセプト」を施そうと考えたことが現在の状況を生んでしまったのだと考えている。

「だから、本当の意味で、メルセデスが一番揺れているんだ」

激しく上下にマシンが振動するポーポイズ現象にひっかけてそう語ったハウグは、次のように続けた。

「風洞ではうまく機能するが、グラウンドエフェクトがブレーキをかけ続けると、まるで削岩機に乗っているような状態になるんだ。そして、これはレギュレーションの修正では改善されないだろう」

「彼らにとって、今は大変な時期だ。しかし、彼らはいずれ解決すると思う。ひょっとしたら空力のコンセプトを完全に見直さなければならないかもしれないが、シルバーストン(第10戦イギリスGP/7月3日決勝)では速いと思うよ」

極端にサイドポッドを小さくした革新的デザインが施されている2022年型メルセデスF1マシンだが、ひょっとしたら、このコンセプトを諦め、プレシーズンテスト1回目に持ち込んでいたよりオーソドックスなデザインのマシンに戻す可能性も出てくるかもしれない。

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