元F1ドライバーであるマルク・スレールは、セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)が、2022年シーズン限りでF1を引退する可能性が高いと考えているようだ。
■5回目のF1タイトル獲得のチャンスがほぼ消えたベッテル
レッドブル時代に4回F1チャンピオンとなった実績を持つベッテルだが、2015年から5年間にわたって在籍したフェラーリではタイトルに手が届かず、2021年にはアストンマーティンへ移籍。
しかし、その年のアストンマーティンには競争力がなく、チームはコンストラクターズランキング7位、ベッテルもドライバーズランキング12位という結果に終わってしまった。
そして迎えた2022年シーズンだが、今年のアストンマーティンF1マシンも昨年以上に戦闘力に欠けるものとなっており、現時点ではコンストラクターズランキング9番手に沈み、ベッテルも開幕戦と第2戦を新型コロナウイルス感染により欠場したという事実はあるものの、現時点ではドライバーズランキング14番手に位置するといった状況となっている。
こうした環境のもとではベッテルのF1に対するモチベーションが下がるのは当然であり、引退を決断するのも近いのではないかという噂もささやかれ始めている。
■今年がベッテルにとって最後のF1シーズンだろうとスレール
スイス出身の70歳となるスレールも、すべての兆候がベッテルの引退が近いことを指し示していると考えている。
「このチーム(アストンマーティン)がチャンピオンになれるとはとても思えない。そうであれば、彼がそれを必要とする理由があるだろうか?」
『motorsport-total.com』にそう語ったスレールは次のように付け加えた。
「私は、彼は今の契約を全うし、別れを告げるだろうと考えているよ。アストンマーティンは彼にとって最後のチャンスだったが、そこでもうまくいっていないからね」
実際のところ、34歳のベッテルが再びタイトルを狙えるマシンを手にすることができる可能性は極めて小さいのが現実だろう。
■問題はベッテルのモチベーション
しかし、スレールは、少なくともベッテルは現在の契約が満期を迎えるまではずっとF1とアストンマーティンの両方にコミットし続けるだろうと考えている。
「コロナウイルスに感染した状態から復帰し、レースを続けているという事実がそれを物語っているよ」
スレールはそう語ると、次のように続けた。
「彼はチームを助け、前進させようとしている。そして進歩の兆しもある。ベッテルは自分の仕事をしているよ」
「彼は単にあきらめることもできただろうし、おそらく、チームを別にすれば、そのことで彼に腹を立てる者はいなかっただろう」
しかし、いずれにせよ、ベッテルがF1引退を決断する日はそう遠くないとスレールは考えているようだ。
「問題はモチベーションだよ。10位を争うことが4回F1チャンピオンとなったドライバーであるベッテルをやる気にさせることができるだろうか? それは何とも言えないね」
■環境とF1の問題に悩むベッテル
実際のところ、最近は環境問題に大きな関心を持っていることで知られるベッテルは、現在の社会にとってF1自体の存在価値があるのかどうかについて悩んでいるようだ。
今季のF1第5戦として初開催されたマイアミGPを終えた後、それまで生やしていた髭を剃ってイギリスの放送局『BBC』の討論番組である『Question Time(クエスチョンタイム』に出演したベッテルは、次のように語っている。
「この問題は、僕も毎日自分自身に問いかけていることだよ。僕は聖人ではない。マシンから降りた時には、もちろん、 『これは僕たちがやるべきことなのか?』と考えているんだ」。