ルイス・ハミルトンの“振る舞い”が、F1レースディレクターのマイケル・マシを“生け贄”にする一因となっていた。
そう主張するのは、レッドブルのヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)だ。
2021年のF1最終戦アブダビGP決勝終盤にセーフティカーが導入された際、それまでレースを支配していたハミルトンがマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に逆転を許し、通算8回目となるF1ドライバーズタイトル獲得を逃してしまった。そして、その際にマシが行ったレース再開手順が大きな論争を呼ぶこととなった。
最終的に、FIA(F1統括団体の国際自動車連盟)はマシをF1レースディレクターからはずし、2022年以降はレースディレクターを2名が交替で務め、それをアドバイザーが補佐することや、サッカーでおなじみのVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)システムを導入することなどを決定している。
フェルスタッペンは、そのFIAの決定には納得しておらず、マシが“生け贄”にされたのだとコメントしている。
そして、オーストリア出身の78歳となるマルコも同意見のようだ。マルコはドイツの放送局『RTL』に語った。
「彼の数年にわたる仕事ぶりに目を向けるべきだよ」と
マルコに言わせれば、2021年にはマシが行った別の判断によってハミルトンが利益を得たケースもあったが、レッドブルはマシの更迭を要求するようなことはしなかったという。
マルコは、昨年のアブダビGPで起こったことが世界中に論争を引き起こしたことから、F1とFIAは世論をなだめるために行動したのだと考えている。
そして、F1やFIAがマシを更迭することを決めた背景には、7回F1チャンピオンとなった実績を持つハミルトンがその後ずっと沈黙を貫き、このままF1を引退する可能性もあるとほのめかしていたことがあったのだとマルコは考えている。
「ハミルトンが引退しないことは明らかだったよ」とマルコは続けた。
「ドライバー市場には何の動きもなかったからね」
「もしハミルトンがメルセデスに辞めるかもしれないと告げていたならば、彼らはすぐに後任を探し始めただろう。だが、そうではなかった」
「沈黙することで、彼はその状況や決定に対する不満を示したかっただけなんだ。そうした行動のいくつかがマシの解雇につながったわけで、それはおかしいと私は思う」
「もしマシが、VARやアドバイザーなど、これから導入される新しいツールをすべて持っていたら、彼にとっても判断することがもっと簡単になっていただろう」
そう主張したマルコは、次のように付け加えた。
「結局のところ、計画された措置が本当にうまくいくのかどうか、これから様子を見ていく必要があるよ」