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【ホンダF1特集:パート5/5】レッドブルの賢い戦略

2020年01月01日(水)0:06 am

このホンダF1特集では5つのパートに分けてホンダの“第4期”F1活動のここまでの経緯を振り返ってみる。

■【パート5/5】レッドブルの賢い戦略

マクラーレンとホンダのプロジェクトがうまく行かなかった原因については第1話から第3話にかけて検証してきたが、最大の要因はイギリスと日本の文化の違いをうまく克服できなかったことにあったと見てもいいかもしれない。

だが、レッドブルはその点に関して非常に洗練された賢いゲームを展開したと言っていいだろう。

レッドブル・レーシングは自動車メーカーという後ろ盾を持たない、いわゆるプライベートチームだ。ジャガーを買収してF1参戦を開始した2005年はコスワースエンジン、翌2006年はフェラーリエンジンを搭載していたが、2007年からはルノーをエンジンパートナーに迎えた。

そのルノーが2010年を最後にF1ワークスチームとして撤退したことで、レッドブルはルノーから事実上のワークス待遇でエンジン供給を受けており、2010年から2013年までセバスチャン・ベッテルとともに4年連続でF1タイトルを獲得するという黄金時代を築くことに成功した。

しかし、2014年からパワーユニットと呼ばれるハイブリッド1.6リッター・ターボエンジンが導入されると、ルノーが開発に後れをとったことでレッドブルの戦闘力も低迷した。

レッドブルはルノーエンジンへの不満を強め、標準以下のカスタマーサービスしか受けていないと公にしたことで、関係性は友人から敵へと変わっていった。

それはフランス文化との衝突だったのだろうか?

答えはノーだ。この衝突は第2話で述べたマクラーレン・ホンダのように、レッドブルとルノーは協力できていなかったのだ。

レッドブルは、2016年からルノーが再び自らのワークスチームを復活させたこともあり、マクラーレンとのプロジェクトに失敗しF1からの撤退さえうわさされていたホンダと組むことを選択した。だが、マクラーレン・ホンダの失敗の轍を踏まないよう、“賢い戦略”を展開したのだ。

マクラーレンは、日本人がイギリス流のやり方を学び、本当に「イエス」ではない場合は丁寧にうなずかないことを望んでいた。しかしレッドブルは、ホンダをパートナーに迎えるにあたって日本文化や日本語の勉強会を開催し、名誉、忍耐、尊敬、不屈の精神、忠誠心などを学び、異文化にうまく対応するための準備を欠かさなかった。

そして、F1で唯一の文化である「勝利」という最終目的を達成するために、批判と要求を繰り返すだけではなく、本当の一枚岩となってホンダと共に戦おうという姿勢を維持した。

レッドブルは、それがF1でタイトルを獲得するための唯一のルートだと認識し、謙虚になったのだ。前年まで公然とルノーに対して批判的な言動を行っていたフェルスタッペンが、2019年はホンダに対してほとんどそういう姿勢を見せなかったことも、そうしたレッドブルの姿勢を表すひとつの証拠だと考えられるだろう。

ホンダも2018年から田辺豊治氏をテクニカルディレクターに据えると、2019年には山本雅史氏をF1担当マネジングディレクターとしてF1に専念させるなど、マクラーレン時代には見られなかったような親密な関係をレッドブルと築こうという姿勢を明らかにしていた。

こうしたお互いの努力の成果は、多少の幸運に恵まれたという側面はあるにせよ、レッドブル・ホンダのプロジェクト1年目は、3回の優勝、3回のポールポジション獲得という数字以上の成果を生み出すことに成功した。

F1は容赦ない世界かもしれないが、それは勝者にも敗者にも同じように当てはまる。言い換えれば、各々が値するものを手に入れるのだ。

2020年、レッドブル・ホンダはともにF1を制覇するために全力を尽くすことになる。勝利を祝うために熱い日本酒とキンキンに冷えたレッドブルを準備しよう。

(文:Andrew Maitland/翻訳・編集:トップニュース編集部)

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