レッドブルの最高技術責任者であるエイドリアン・ニューイが、現在のF1技術レギュレーションや昨年からF1の新オーナーとなったリバティ・メディアが掲げる方針を批判した。
レッドブルは今週、すでにF1マシン設計の第一線から退いてアストンマーティンとの共同プロジェクトによる市販車設計や競技用ヨット設計プロジェクトに従事していることで知られるニューイを補佐するためか、フランス人技術者のピエール・ヴァッシェを新たに設けたテクニカルディレクターというポストに据えたことが明らかとなっている。
ニューイは2月下旬から2回に分けて合計8日間にわたってバルセロナで行われた今季の公式シーズン前テストにも顔を見せていたが、今のF1にかつてほどの情熱を抱くことはできていないようだ。
■メルセデスPUのアドバンテージをくつがえすことは不可能
F1カーの空力処理に卓越した能力を発揮してきたニューイには天才F1カー設計者との称号すら与えられている。しかしニューイは現在ではどれほど優れたクルマを設計してもPU(パワーユニット)と呼ばれるF1エンジンによってすべてが決まってしまうのだとドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に次のように語った。
「メルセデスはこのエンジン規格においてすべての面で優れているよ」
「いいクルマを造ってもそれを埋め合わせることなんてできやしない」
■自然吸気V8の方が環境に優しい
ニューイはさらに、複雑なハイブリッド方式PUよりも、かつての自然吸気V8あるいはV10エンジンの方が実際にはもっと環境に優しいエンジンなのだという考えを持っているようだ。
「1998年には、(当時ニューイが在籍した)マクラーレンの重量は580kgで、45kgのバラスト(重量配分のバランスをとるおもり)を積んでいた。現在は733kgで事実上バラストはない」
そう語ったニューイは次のように付け加えた。
「これほど重くなければ、もっと燃料を節約できるはずなんだ。だが、それはほかのエンジンを使うことでしか可能とはならないよ」
■チーム予算制限は現実的には機能しない
一方、ニューイはリバティ・メディアがF1チームの年間予算に上限値を設けるという方針を掲げていることについても次のように語っている。
「あれは社会主義だ。そして現実の世界では、あくまでも理論上で機能するだけだ」
ニューイは単に予算を制限するのではなく、風洞テストやCFD(数値流体力学)によるシミュレーションを禁止する方がよいアプローチになるはずだと考えている。そうすれば必要とされる人員数ももっと減るだろうというのがニューイの意見だ。