最近、ザウバーとそのブラジル人ドライバー、フェリペ・ナッセに関する奇妙とも言えるうわさがささやかれている。
■アメリカで浮上したナッセのフォース・インディア移籍説
先週末にテキサス州オースティンで開催されたF1アメリカGP(第18戦)の開催中に、ナッセが2017年にフォース・インディアへ移籍することがほぼ確実となったという報道が行われた。
24歳のナッセは資金力のあるブラジル銀行という優良スポンサーを抱えていることで知られているが、フォース・インディアへの移籍に関してはF1最高責任者のバーニー・エクレストンもひと肌脱いだようだと複数のメディアが報じている。
スイスの『Blick(ブリック)』は、今季限りでフェリペ・マッサ(ウィリアムズ)がF1を去ることになったのを受けてエクレストンが「南米から少なくとも1人は力のあるドライバーが参戦して欲しい」と語ったことを紹介し、そのうわさには現実味があると示唆している。
しかし、ナッセ本人はフォース・インディアとは交渉をしたこともないとこのうわさを完全否定している。
■いまだに財政難がうわさされるザウバー
一方、ブラジルから聞こえてくるうわさによれば、ザウバーはナッセとそのスポンサーであるブラジル銀行をなんとしても失いたくないと考えているようだ。
一時は経営破たん目前の状態を迎えていたザウバーだが、スイスの投資家グループにチームを売却したことで、今は資金繰りに困ることもなくなったようだと言われている。
だが、ザウバーは2017年にはフェラーリから1年落ちのパワーユニット供給を受けることで合意したとも伝えられており、財政的問題がまだ完全にはクリアされていないのではないかと考えている者も少なくない。
しかし、唯一の女性F1チーム代表であるモニシャ・カルテンボーンは、来季型落ちパワーユニットを使用するという判断を行ったのは必ずしも財政的な問題によるものではないと次のように主張している。
「(2017年には)大きな(レギュレーションの)変化が訪れることは分かっています。そして私たちの規模や能力からすれば、私たちはその変更のほうに集中する必要があるのです」
■ザウバーによるナッセ妨害活動説も?
そうした状況のもと、ブラジルではさらに耳を疑うようなうわさがささやかれ始めているようだ。
それは、ナッセとそのスポンサーを手放したくないがために、ザウバーが故意にナッセがあまりレースで活躍できないようにチーム内で妨害を行っているというものだ。事実、最近の4レースではすべてチームメートのマーカス・エリクソンのほうが予選でナッセを上回っているが、特にアメリカGP予選ではエリクソンが16番手でQ2進出を果たしたのに対し、ナッセは21番手と大きく差をつけられていた。
ナッセの成績がふるわなければ、ほかのチームもナッセを獲得することに二の足を踏むであろうという考えがザウバーにあるためだというのがそのうわさの根拠のようだ。
■ザウバーにそんな余裕はないはずとドイツ紙
にわかには信じがたい話だが、『Blick(ブリック)』も次のように論じている。
「ザウバーがそんな妨害工作をするなど、意味のないことだ。まったくばかげている」
「なぜならば、彼らが2016年の最後の目標である(コンストラクターズランキング)10位を達成するには2人のドライバーが必要だからだ」
昨年は19レースで36ポイントを稼いでチームランキング8位で終えたザウバーだが、今季はいまだに1ポイントも獲得することができておらず、最下位の11番手に沈んでいる。ザウバーとしては、残り3戦でなんとかポイントを獲得し、現在1ポイントで10番手に位置しているマノーを逆転することが最大の目標となる。