メルセデスAMGが、F1ロシアGP決勝が行われたソチにおいて、最近ルイス・ハミルトンのクルマの方にばかりトラブルが発生するのは意図的な陰謀ではないかとのうわさに対して強く反論した。
【結果】F1ロシアGP決勝の順位、タイム差、周回数、ピット回数
■なぜかハミルトンのクルマにだけトラブル発生
ロシアGP決勝では、現在絶好調のニコ・ロズベルグが昨シーズンから7戦連続での勝利となる開幕4連勝を飾り、ランキング2番手のチームメート、ルイス・ハミルトンとのポイント差を43ポイントにまでひろげた。
2014年、2015年と2年連続でハミルトンにタイトル争いで敗れていたロズベルグだが、今季はハミルトンのクルマの方にばかりトラブルが発生していることも幸いし、ここまでのところは大きなリードを築いている。
中国GPでパワーユニットにトラブルが発生したハミルトンは予選に出走することができず、決勝を最後尾からスタートするはめになっていた。そして、先週末のロシアGPでも予選Q2終了時にまたパワーユニットに問題が発生し、Q3出走ができず、決勝は10番手スタートとなっていた。
さらに、レースでロズベルグに次ぐ2番手の位置までばん回し、首位を走るロズベルグとの差を詰めようとしていた矢先に今度は冷却システムに問題が発生。結局ハミルトンは勝利を目指して戦うチャンスを失ってしまっていた。
■チーム内のアンチハミルトンによる破壊工作?
今年F1タイトル3連覇を目指すハミルトンだが、なぜかここまでハミルトンのクルマの方にばかりトラブルが発生している。そして、中にはそれは単に運が悪かっただけではないのではないかと考えている者もいるようだ。つまり、何らかの理由により、チーム内にアンチハミルトンの動きがあり、わざとハミルトンのクルマにトラブルを発生させているのではないかというわけだ。
■「でたらめだ」とメルセデス首脳陣
そうしたうわさに関してイギリスのテレビ局『Sky(スカイ)』に質問されたメルセデスAMGの非常勤会長を務めるニキ・ラウダは、「そんなのはでたらめだ」と主張。さらに、ビジネス担当エグゼクティブディレクターの肩書を持つトト・ヴォルフは、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に次のように語った。
「我々は8台のエンジンを用意しており、すでに何千キロメートルもの距離に相当するテストを行っている。だが、今回の不具合が発生したのは2回だけだし、それがいつも同じクルマで起こってしまったということだ」
伝えられるところによれば、メルセデスAMGではそうした問題が発生する理由として、ハミルトンのクルマのシャシーに何か問題があるかもしれないとの疑いも持っているという。
だが、ロシアGPでハミルトンがロズベルグに迫る勢いを見せたところでタイミングよく冷却水漏れが発生したのは、何らかの作為があったことを示すものだという説をとなえている者もいる。
■ダメージを最小限に抑えたメルセデスAMG
ヴォルフは、そういうことを考える人たちは「狂っている」としか言いようがないとし、次のように続けた。
「我々がハミルトンに対して破壊工作的なことを行うわけがない。彼は我々にとって素晴らしい友人なのだからね。その彼を我々が失望させてしまっているんだ」
事実、メルセデスAMGではロシアでの予選後に、ハミルトンへのダメージを最小限にとどめるための努力を惜しもうとはしていなかった。
メルセデスAMGは、ハミルトンにグリッド降格ペナルティーが科されることを防ぐため、ジェット機をチャーターしてイギリスから重要なパーツを夜のうちにロシアまで空輸していた。それにかかった費用はおよそ4万3,000ドル(約460万円)だったと伝えられている。
■一方で不可解なチーム再編成も
だが、こうした陰謀説がささやかれる一因となっているのは、今年のハミルトンのクルマは、昨年までロズベルグを担当していたメカニックたちによって整備作業が行われているということもあるようだ。
度重なるトラブルに意気消沈気味のハミルトンは、1日(日)に次のように語った。
「突然、さしたる理由もないまま(メカニックの)入れ替えが行われたんだ」
「だけど、それがこういう問題が起きている理由ではない。早とちりは禁物だよ」
「こんなことは過去3年にわたって起きたことはなかったし、今になってそういうことが起きていると考える理由なんて見当たらないよ」
ラウダも、そういう陰謀説などとんでもない話だと次のように付け加えた。
「そういう話がでるのは残念だね。我々のところでは1,100人全員が2台のクルマのためにベストを尽くしているんだ。今回の件は簡単に説明できるよ。単なる人的ミスだ」