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「カスタマーカーはF1を墓場へと導く」とパット・シモンズ

2015年06月03日(水)12:30 pm

小規模F1チームたちが、現在進められようとして「カスタマーカー」導入の動きに強い反発を示している。

現在、マノー・マルシャ、フォース・インディア、ザウバー、そしてロータスの4チームは経営破たんの危機にひんしており、早ければ今年中にもそうした状況に陥ってしまう可能性もあると報じているメディアもある。

そうした小規模チームたちは、もっとエンジン価格を下げることと、F1の収益をもっと公平に分配するよう訴えている。

■F1ボスと大規模チームが推すカスタマーカー制度

だが、こうした問題の解決策としてF1最高責任者のバーニー・エクレストンや、大規模チームたちが掲げているのが「カスタマーカー」制度の導入だ。

これに関する最新の情報によれば、フェラーリやメルセデスAMGといった大規模チームではそれぞれ4台のF1カーを製造し、そのうちの2台を実質的に自分たちのBチームとなる小規模チームに提供するという形になるだろうと伝えられている。

この場合、大規模チームからカスタマーカーの供給を受けるチームは、現在の「コンストラクター」としての身分を失ってしまうことになる。現在のF1ルールでは、シャシーを自社製造することがコンストラクターとしての要件となっているからだ。

エクレストンは、従来のコンストラクターによるF1選手権と同時に、カスタマーカーの供給を受けるチームによる「GP1シリーズ」を同時に走らせるという案も示している。

■カスタマーカー導入はF1の衰退につながるとの意見

これに関し、フォース・インディアのチーム副代表であるロバート・ファーンリーは次のように語った。

「我々は独立性を失ってしまうことになる」

「彼らは我々に対してどのドライバーを乗せろとか、(会議では)誰に投票しろといったことを要求してくるだろう。我々はそんなことを望んではいない」

かつてトールマン、ベネトン、ルノーF1などで活躍し、現在はウィリアムズのチーフテクニカルオフィサーを務めるパット・シモンズもこの問題を非常に深刻に受け止めている。

「今ほどF1について心配になったことは、これまでにはなかった」

そう語ったシモンズは、次のように付け加えた。

「カスタマーカー制度を導入すれば、F1を墓場へと導くことになるだろう」

■チームとしての独自性が失われることに

ファーンリーはさらに次のように続けた。

「ひとたびカスタマーになってしまえば、その後はずっとカスタマーとなってしまう。我々は自分たちの設計担当者を解雇することになるだろうし、F1カーも売却してしまうことになるだろう。そして自らの専門知識を放棄してしまうことになる。そして元のような状態に戻ることはない」

「カスタマーになってしまえば、我々はメーカーの単なる操り人形になってしまうんだ」

ザウバーはそうしたことを経験してきたチームだ。かつてBMWのワークスチームとなっていた時期には、自分たちでギアボックスの製造を行うことを止めていた。当時はBMWがドイツのミュンヘンでその開発を行っていたためだ。

だが、BMWのF1撤退とともに、再びチーム設立者であるペーター・ザウバーがチームを買い戻したときには、ザウバーにはすでにギアボックス製造のノウハウや余裕もなく、フェラーリからギアボックスを購入しなくてはならない状況に置かれている。

「我々にはもはやそうする(ギアボックス製造)だけの専門知識がないんだ」

そう語ったザウバーのベアト・ツェンダー(チームマネジャー)は、もしカスタマーカー制度が導入されれば、「それはほかのどの部分についても同じような状態になるだろう」と付け加えた。

■大規模チームが予算削減に応じないのは?

シモンズは、なぜ大規模チームたちが、巨大なコストの削減策を受け入れず、代わりにカスタマーカーの導入を提案しているのか、その理由はよく分かると次のように語った。

「もし明日からすべてのチームが1億2,000万ポンド(約230億円)の予算でレースをしなくてはならなくなったとしたら、ウィリアムズがF1タイトルを獲得するだろう。なぜなら、我々はそういう予算で効果的にチーム運営をすることに慣れているからね」

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