昨年のF1最終戦アブダビGP決勝で劇的な形で通算8回目のF1ドライバーズタイトル獲得を逃してしまったルイス・ハミルトン(メルセデス)は、その後ずっと沈黙を守り続けており、このままF1を引退する可能性すらあると考えられている。
だが、ほとんどの関係者は、メルセデスとの間に2023年までの契約を結んでいるハミルトンが突然引退するようなことはないだろうと考えているようだ。
しかし、ハミルトンの母国であるイギリスの『Telegraph(テレグラフ)』紙は、ハミルトンとメルセデスとの契約には、2023年末までのどの時点でもハミルトンがメルセデスを去ることができ、それに伴う法的措置などを行うことはできないという条項が存在しており、ハミルトンがこのまま引退してしまうことは現実的に可能なのだと報じている。
仮に、本当にハミルトンが突然F1を引退すると決めた場合、大きな問題を抱えるのはメルセデスだ。
すでに、あと1か月後には今年最初のF1プレシーズンテストが行われるという時点に来ているわけだが、もしハミルトンが本当に引退を決意し、メルセデスに欠員が生じた場合には急遽後任ドライバーを選任しなくてはならないことになる。
実際のところ、メルセデスに相応しい現役ドライバーをライバルチームから引き抜くのは不可能に近いだろう。そうなれば、メルセデスとしては自分たちの契約下にあるドライバーの中からハミルトンの後任を抜擢することしか選択肢がないかもしれない。
その場合の最有力候補だと考えられているのが、オランダ出身ドライバーのニック・デ・フリースだ。
メルセデスのフォーミュラEチームで昨年のチャンピオンとなった26歳のデ・フリースは、昨年のアブダビGPの翌週にヤス・マリーナ・サーキットで行われたテストに参加し、ハミルトンの2021年型F1マシンをドライブした経験も持っている。
しかし、ハミルトンのうわさについて尋ねられたデ・フリースは母国オランダの『Formule 1(フォーミュレ1)』誌に次のように答えた。
「そんなことは気にしていないよ」
「僕たちは(フォーミュラE開幕戦の)サウジアラビアに向けて取り組んでいるし、そういう類いのシナリオを考える余地なんてないと思う」
興味深いことに、デ・フリースはメルセデス所属ドライバーであるものの、ハミルトンよりも同郷のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の方が2021年のF1チャンピオンに相応しかったのは確かだと主張している。
「マックスは100パーセントあのタイトルを獲得した素晴らしいドライバーだ。彼は本当にF1チャンピオンに相応しいよ」
「それは誰もが認めるところだと思っている」
「あのアブダビの日曜日には、ルイスは勝つためにできることはすべてやった。そして、これまでにはなかったような形で決着がついた」
「だけど、そのことが、マックスがタイトルに値し、偉大なチャンピオンであることを妨げるものではないよ」
そう主張したデ・フリースは次のように付け加えている。
「ルイスがそのことに非常に失望し、自分のタイトルが奪われたと感じていることも、僕には理解できるよ」