レッドブルが、若手ドライバー育成プログラムを大幅に縮小することになるかもしれない。
■多くのF1ドライバーを輩出したレッドブルの育成プログラム
レッドブルではこれまで有望な若手ドライバーと育成ドライバー契約を結び、その中から才能があると見込んだドライバーにセカンドチーム(現在はアルファタウリ)でF1経験を積ませ、トップチームであるレッドブルに引き上げるというプログラムを運用してきている。
例えば、3年連続でF1チャンピオンとなったマックス・フェルスタッペンを始め、4度F1チャンピオンとなったセバスチャン・ベッテル、カルロス・サインツ(現フェラーリ)、ダニエル・リカルド(現アルファタウリ)、ピエール・ガスリー(現アルピーヌ)、アレックス・アルボン(現ウィリアムズ)、そしてもちろん日本人ドライバーの角田裕毅(アルファタウリ)や、リカルドの負傷欠場中に印象的なパフォーマンスを見せたリアム・ローソンなど、多くの現役F1ドライバーや元F1ドライバーがレッドブルのジュニアプログラムを通じてF1に上り詰めたという実績がある。
そして、現時点においては、F3選手権に2人、F2選手権には6人のレッドブルジュニアドライバーが参戦している。
■育成プログラム縮小を示唆するホーナー
しかし、オランダの『Formule 1(フォーミュレ1)』誌によると、レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーが最近、ジュニアドライバーの数を減らしたいと考えていることを認めたという。
最近、ホーナーとドライバー育成プログラム責任者であるヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)が対立しているとの噂が流れたが、恐らくその原因となったのがこのドライバー育成プログラムの見直しにかかわる意見の不一致だったのかもしれない。
『Formule 1(フォーミュレ1)』は「レッドブルからの正式な報告はまだない。しかし、数名の離脱が差し迫っているようだ」とし、次のようなホーナーのコメントを紹介している。
「我々の組織に人材が不足しているわけではない。そして、ヘルムートは若い才能を見極めるという素晴らしい仕事をしてくれた。それが彼の一番の役割なんだ」
「しかし、毎年マックス・フェルスタッペンを育てあげることはできない。才能ある者が出てくるのには波がある」
そう語ったホーナーは次のように付け加えている。
「厳しいプログラムだ。しかし、F1は花嫁学校ではない。完成品としてここに来る必要があるし、成功したドライバーにチャンスが与えられるんだ」
■レッドブルには優秀なドライバーがシートの数以上にいる
F2チームのロディン・カーリンは、今季は22歳のエンツォ・フィッティパルディと20歳のゼイン・マローニーという2人のレッドブル育成ドライバーが所属している。
だが、同チームのCEOを務めるデビッド・ディッカーは、その2人はいずれもレッドブルとの契約を失うことになるだろうと予想している。
「私が持っている情報では、ジュニアチームにいるほとんどのドライバーに対するサポートはゼロに近い」
イギリスの『Mirror(ミラー)』紙にそう語ったディッカーは、次のように続けた。
「私の知る限り、彼らは来年レッドブルからサポートされることはないだろう」
「現実を見れば、(レッドブルは)すでに優秀なドライバーをシートの数よりも多く抱えている。だからそうする意味はあるだろうか?」
■レッドブルとの決別を早々と発表した育成ドライバーも
こうした中、レッドブル育成ドライバーであるノルウェー出身のデニス・ハウゲは、今季限りでレッドブルと「決別」することをソーシャルメディア上で明らかにしている。
現在F2でランキング8番手に位置している20歳のハウゲは、次のように語っている。
「長年にわたる彼らのサポートに感謝しているし、今後に向けて新たなチャンスを探っていくつもりだ」
■2024年の育成ドライバーは2人だけ?
スウェーデンのストックホルムに拠点を置くストリーミングサービス『Viaplay(ヴィアプレイ)』のポーランド人ジャーナリストであるクバ・ミコライジャクは、レッドブルは2024年には今季のF2選手権でランキング14番手につけている19歳のイサク・ハジャールと、フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)がマネジャーを務める18歳のスペイン人ドライバーであるペペ・マルティの2人だけを育成ドライバーとすることになるだろうとしている。
アルジェリア系フランス人であるハジャールは、今週末に開催されるF1第20戦メキシコシティGPの金曜フリー走行1回目に角田に代わって出走することになっており、伝えられるところによれば最終戦アブダビGP(11月26日決勝)でも金曜フリー走行に出走するチャンスが与えられる予定だという。
■岩佐歩夢のキャリアにも影響?
もし本当にレッドブルがそれ以外の育成ドライバーとの契約を解除することになれば、現在F2でランキング3番手に位置している22歳の岩佐歩夢や、同13番手につけている18歳のアメリカ人ドライバーであるジャク・クロフォード、さらには元F1ドライバーであるファン・パブロ・モントーヤの18歳の息子であるセバスチャン・モントーヤらにとっては大きな痛手となりそうだ。