早ければ2025年に最大2つの新F1チームが誕生する可能性が出てきたようだ。
■2チームが新規F1参入申請基準に合格か
F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)は、新規参戦を望む複数の候補チームからの申請を受け、その審査プロセスを進めてきている。そして、このほど2チームが、パリに本拠を置くFIAから申請基準を満たしているとの連絡を受けたと考えられているようだ。
ドイツのモータースポーツ専門誌『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』によれば、その2チームとはアンドレッティ・キャデラックとハイテックGPだろうという。
「彼らはどちらも技術、人材、財政の面でF1に参入できるポジションにある」と同誌は付け加えている。
アメリカの大手自動車会社であるキャデラックの支援を受けるアンドレッティに関しては、以前から積極的にF1参入を目指していることで知られている。そして、現在はF2などに参戦しているハイテックGPもカザフスタンの大富豪であるウラジーミル・キムの支援を受けてF1参戦に向けて体制を整えつつあるようだ。
もしもFIAがこの2チームの申請を正式に受理したとすれば、今後本当にF1参入が可能かどうかについて正式な審査手続きが開始されていくことになるだろう。
■既存チームやF1はチーム数増加に反対
だが、これらの新規参入候補チームにとって障害となっているのは、特別拒否権を持つフェラーリを始め、多くの既存F1チームが新チーム参入に反対していることだ。
さらに、F1オーナーのリバティ・メディアとF1最高経営責任者(CEO)を務めているステファノ・ドメニカリもチーム数が現在の10チームよりも増えることを好ましく思っていないと伝えられている。
■チームの国籍は「関係ない」とフェラーリのボス
こうした中、F1が現在アメリカでの市場開拓に力を入れていることもあり、アンドレッティ・キャデラックのような本格的なアメリカンチームがグリッドにつくことでF1が大きな恩恵を受けることになるはずだとの考えもある。
だが、今季からフェラーリのチーム代表を務めているフレデリック・バスールは、そうした主張には納得していないと次のように語っている。
「F1の魅力はむしろドライバーの国籍にあるんだ。チームの国籍とは関係ないよ」
■FIAだけが決めるものではないとF1最高責任者
また、最高責任者としてF1を率いているドメニカリとFIAのモハメド・ベン・スレイエムとは対立関係にあると見られており、このこともF1新チーム問題をさらに複雑なものにしているようだ。
ドメニカリは、どのチームがF1参戦の承認を得られるかはオーナーであるリバティ・メディアがコントロールできなければならないと次のように主張している。
「これまで常に言ってきたように、会社にとって正しい決断を下す必要がある」
■既存チームの立場もわかるとアンドレッティ
アンドレッティ・キャデラックのF1プロジェクトをリードする元F1ドライバーであり、母国アメリカでは大きな実績を残しているマイケル・アンドレッティは、今年初旬にF1の既存チームが11番目のチームにチャンスを与えようとしないのは 「貪欲」だからだと非難していた。
このほど、ドイツの『Speed Week(スピードウィーク)』からそのことについて質問された60歳のアンドレッティは次のように答えている。
「その言葉を使うべきではなかったかもしれないね」
「結局のところ、もちろん、誰もが自分たちのことを第一に考えている。私が彼らの立場だったら、おそらく同じことをしていただろう」
「私はチームたちを責めるつもりはないよ。非常に金のかかるスポーツだし、誰もが信じられないほどの情熱を注いでいる。彼らは自分たちを守らなければならないし、私もそれは理解しているよ」
1993年にマクラーレンでアイルトン・セナのチームメートとしてF1を戦った経験を持つアンドレッティはそう語ると、次のように付け加えた。
「だが、最終的には彼らが決めることじゃない。その決定はまだFIAとFOM(F1商業権管理組織であるフォーミュラ・ワン・マネジメント)に委ねられているんだ」