「ハミルトンは戻ってきた」メルセデスF1がレッドブルに近づくのに必要なのは？アロンソも諦めず「反撃する」
メルセデスが今季のF1第7戦モナコGPで投入した新コンセプトによる2023年型マシンが、先週末にバルセロナで行われた第8戦スペインGPではルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルの2人を表彰台に導いている。
だが、そのメルセデスの改良マシンが今後どれほどの力を発揮し続けるのかはまだ不透明だ。
■スペインGP決勝では速さを見せたメルセデス
バルセロナでの金曜フリー走行1回目を12番手、2回目を11番手で終えたハミルトンは、メルセデスの改良マシンに関して、翌日の予選でQ3に進出するのも難しいだろうと悲観的なコメントを行っていた。
しかし、土曜日のフリー走行3回目でレッドブル勢につぐ3番手の位置につけたハミルトンは、予選でも5番手タイムをマーク。予選3番手となったピエール・ガスリー（アルピーヌ）がグリッド降格となったことから決勝を4番グリッドからスタートすることになった。
そして、決勝ではハミルトンと共に、予選では12番手ともうひとつ波に乗り切れていなかったラッセルが安定した走りを見せ、ハミルトンが2位、ラッセルは9つも順位を上げて3位となり、今季初めてメルセデスの2人が一緒に表彰台に上ることに成功している。
だが、それでも、メルセデスがこのレースで今季5勝目をあげた現F1チャンピオンのマックス・フェルスタッペン（レッドブル）を脅かすことはできなかった。
■シーズン後半にはメルセデスが接近してくるだろうとレッドブルのボス
レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは「最終的には、彼らは23秒も後れていたよ」と余裕を見せたものの、次のように続け、メルセデスを警戒する必要があると示唆している。
「しかし、それでも彼らは一歩前進を果たした」
「彼らが導入したのは大きなパッケージだった。だが、我々もシーズン後半にはいくつか改良パーツを持ち込む予定にしているよ」
「しかし、シーズン後半になれば、彼らが我々にプレッシャーをかけ始めると私は思っている」
■メルセデスが進歩してもレッドブルとの差は変わらない
だが、かつてフェラーリやブリヂストンのエンジニアを務めていたオランダ出身のキース・ファン・デ・グリントは、本当にそうなるかどうかはわからないと考えているようだ。
「パーセンテージで計算すると、差はまだ同じだよ」
スウェーデンのストリーミングサービスである『Viaplay（ヴィアプレイ）』にそう語ったファン・デ・グリントは次のように続けた。
「昨年も、高速コーナーがあるサーキットではメルセデスがかなりよかったからね」
「カナダ（第9戦／18日決勝）では再び失望する可能性もあると思うよ」
■ハミルトンは改良マシンに満足？
一方、ドイツ出身元F1ドライバーのラルフ・シューマッハは、メルセデスの改良マシンが“ノーサイドポッド”と呼ばれる独特なコンセプトが施されていた以前のマシンより優れているのは明らかであり、今後メルセデスがいくつかのサーキットではフェルスタッペンを困らせる存在となる可能性さえあると考えている。
「新たなメルセデスのパッケージにはもっと可能性があると思うよ。だが、問題は、メルセデスがそれにどれだけ金をかけられるかだ」
『Sky Deutschland（スカイ・ドイチュランド）』にそう語ったラルフ・シューマッハは、少なくとも、ハミルトンはメルセデスの改良マシンに満足しているように見えると、次のように続けている。
「ルイスの方が、新しいコンセプトでジョージ・ラッセルよりも少しうまくやれているようだね。だが、彼（ハミルトン）はかなり満足しているようにも見えた」
「彼はほっとしているように見えるし、再び地平線に光を見出しているようだ。ここしばらく彼から消えていた楽観性を感じたんだ。彼は戻ってきたよ」
■今後の注目ポイントはメルセデス対アストンマーティン
実際のところ、メルセデスが調子を上げてきたのは確かだとしても、レッドブルのフェルスタッペンを脅かす存在になることはないと考えている者が多いようだ。しかし、少なくとも、メルセデスとアストンマーティンが今季のコンストラクターズ選手権2位争いを繰り広げていく可能性はあるだろう。
フェルナンド・アロンソが今季これまで5回表彰台に上る活躍を見せたことでランキング2番手に位置していたアストンマーティンだが、バルセロナでダブル表彰台を獲得したことでメルセデスがこれを逆転し、現時点では18ポイントの差がついている。
しかし、ホームレースだったスペインGPを今季ワーストの7位で終えたアロンソには、これからもまだメルセデスと争っていく自信があるようだ。
「僕たちはカナダで反撃するよ」
そう語った41歳のアロンソは、次のように付け加えた。
「ここでは、予選が僕たちのアキレス腱だったんだ」。
