ドイツ出身の元F1ドライバーであるハンス・ヨアヒム・シュトゥックが、もしミック・シューマッハが今年もハースで走っていたとして、ニコ・ヒュルケンベルグのようなパフォーマンスを見せるのは難しかったのではないかと示唆した。
■予想以上のパフォーマンスを見せるヒュルケンベルグ
フェラーリのアカデミードライバーであったシューマッハは、フェラーリがエンジンを供給するハースから2021年にF1デビューし、2年間を共に過ごしてきた。だが、シューマッハは2022年シーズン限りでそのシートを失い、その後任を務めることになったのはドイツの先輩ドライバーであるヒュルケンベルグだった。
ヒュルケンベルグは、2019年シーズン後にルノーのシートを失うと、昨年までは代替要員として数戦でスポット参戦しただけだった。そして、35歳という年齢のこともあり、ハースがシューマッハに替えてヒュルケンベルグを起用する決断をしたのは間違いではないかとの声があったのも事実だ。
ところが、4年ぶりにF1のフルタイムドライバーとして復帰したヒュルケンベルグは、ここまでの3レースの予選すべてで自分よりも5歳年下のチームメートであるケビン・マグヌッセンを上回り、第3戦オーストラリアGPでは7位に入賞して6ポイントを獲得するパフォーマンスを見せている。
■ハースにはマシンを壊さないドライバーが必要だった
小規模F1チームであるハースのチーム代表を務めるギュンター・シュタイナーが、2023年シーズンに向けてシューマッハとの契約を更新せず、10歳以上も年上で、さらにブランクもあったヒュルケンベルグと契約したのは、2人の経験値の差がポイントだったと考えられている。
シュタイナーは、自らが執筆した本の中で、ミック・シューマッハが2022年のF1日本GPのフリー走行2回目で、ウエットコンディションだったとは言え、アタックラップを行っていたわけでもないのにクラッシュしてマシンに大きなダメージを与えてしまったことに言及しながら次のように語っている。
「低速で安全にマシンをドライブする方法を知っているかどうかわからないドライバーを走らせることはできないよ」
「それはばかげたことだ。その70万ドル(修理に要した約9400万円)があれば何人雇えると思う?」
今年ここまでのヒュルケンベルグのパフォーマンスを見れば、シュタイナーは自分の決断が正しかったという思いを強めているはずだ。
■シューマッハに同じことができるかどうかはわからないとシュトゥック
こうした中、1970年代後半にマーチやブラバムで活躍した現在72歳のシュトゥックは、ヒュルケンベルグの活躍に言及しながら、フランスのスポーツ専門放送局『Eurosport(ユーロスポーツ)』に次のように語っている。
「私は彼のパフォーマンスには驚いていないよ。彼は素晴らしい仕事をしているね」
「ミックもニコのようなパフォーマンスを見せることができるのかどうか、それは私にはわからない」
「一方で、彼(ヒュルケンベルグ)はマシンがどのように機能し、どのように開発されなければならないかという経験を持っている。彼はさらに、シューマッハが最初に積み上げていかなくてはならないレース経験も持っているからね」
今年はメルセデスのリザーブドライバーを務めながらF1グリッドへの復帰を目指しているシューマッハだが、2024年に再びそのチャンスを得ることができ、F1ドライバーとして必要な経験を積むための機会が得られるのかどうか、それは現時点ではまだわからない。