2021年と2022年のF1チャンピオンであるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が、インテルラゴス・サーキットで開催された2022年F1第21戦サンパウロGP決勝でチームオーダーに従ってチームメートのセルジオ・ペレスに順位を譲らなかったことが大きな話題となっている。
■ドライバーズランキング1位2位独占を狙うレッドブル
すでに今季のドライバーズタイトルとコンストラクターズタイトルの獲得を決めているレッドブルだが、チーム史上初となるドライバーズランキング1位2位独占を目指している。そして、それを実現するためには、現在シャルル・ルクレール(フェラーリ)と2位争いを展開しているペレスに少しでも多くのポイントを獲得させる必要がある。
だが、71周で行われたサンパウロGP決勝が残り10周を迎えた時点では3番手に位置していたペレスだが、ライバル勢がソフトタイヤで最終スティントを走行する中、セーフティカー導入によって冷えてしまったミディアムタイヤでのペースが上がらず、フェラーリのカルロス・サインツ、さらには直接のライバルであるルクレールにもオーバーテイクを許してしまった。
■チームオーダーを拒否したフェルスタッペン
そして、レース序盤にルイス・ハミルトン(メルセデス)とクラッシュしたことで大きく順位を下げていたフェルスタッペンがペレスの背後にせまったとき、レッドブルはフェルスタッペンをペレスの前に出す戦略をとった。これは、そのときにはペレスよりも勢いのあったフェルスタッペンに前を走行するフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)やルクレールをオーバーテイクして、ポイントを少しでも奪うためだった。
だが、もしもそれがうまくいかなかった場合には、フェルスタッペンにはペレスを再び前に出すよう指示が出されていたようだ。
結局、フェルスタッペンは最後までアロンソやルクレールをとらえることができず、チームはペレスを前に出すようにフェルスタッペンに連絡。ところが、フェルスタッペンはこれを拒否、無線でチームに次のように伝えていた。
「すでに言ったはずだ。二度と僕にそんなことを求めないでくれとね。それについては納得しているだろ? 僕は理由を説明したし、その通りにしているんだ」
■本当のフェルスタッペンがどういう人間かわかったとペレス
だが、フェルスタッペンの2年連続でのタイトル獲得を、そのサポート役として重要な役割を担ってきたペレスがレース直後にかなり憤慨していたのは確かだ。
「これは彼が本当はどういうやつかってことを示すものだ」
チェッカーフラッグを受けた後でチーム無線を通じてそう語っていたペレスは、その後メディアに対しても次のように語っている。
「彼のために尽くしてきたのに、正直言ってがっかりしているよ。本当に驚いている」
「彼が2つのタイトルを手に入れたとしたら、それは僕のおかげでもあるんだ」
■チーム首脳もフェルスタッペンに怒り
このフェルスタッペンのチームオーダー拒否に関しては、チーム首脳のヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)も苦々しく思っているようだ。
79歳のマルコは、レース後のインテルラゴス・サーキットで次のように語った。
「ドライバーズ選手権で我々が1位と2位になるのを助けるために、マックスはできることはすべてやるべきなんだ」
「今回起こったことについては、それ以上言うことは何もないよ」
■チームオーダーを拒否したのには理由があるとフェルスタッペン
しかし、フェルスタッペンは、この話には続きがあることをほのめかしている。
記者団から、今回の決断は過去の出来事と関連があるのかと尋ねられたフェルスタッペンは、「そうだ」と認め、次のように続けた。
「それには理由があるし、僕たちはちょうどそのことについて話し合ったところだよ。僕たちが腰を据えてそれについて話ができたのはいいことだったと思うし、ここからまた前へ進むことができる」
「僕はチェコ(ペレス)、クリスチャン(ホーナー/チーム代表)、ヘルムートと話をし、すべてを説明したよ」
■きっかけはモナコでのペレスの予選クラッシュ?
フェルスタッペンと同じオランダ出身ドライバーであり、1999年にフォーミュラ・ニッポンでチャンピオンとなったことから日本でもよく知られたトム・コロネルは、『Viaplay(ヴィアプレイ)』に対し、今回フェルスタッペンがペレスへのサポートを拒んだのは、今年の第7戦モナコGP予選の終了間際にペレスが故意にクラッシュし、自分のアタックを妨害したことに対する報復だったのではないかと語っている。
コロネルによれば、ペレス自身がモナコでホーナーとマルコに、わざとクラッシュしたことを打ち明けていたのだという。
オランダの有名なジャーナリストであるエリク・ファン・ハーレンはこれを受けて次のように語った。
「トム・コロネルが言ったことは本当だ。フェルスタッペンはこのことを忘れてはいないんだ」
■もうすべてがクリアになったとフェルスタッペン
それは本当なのかと聞かれた25歳のフェルスタッペンは、次のように答えている。
「自分で判断してよ。僕は何も言うつもりはないけれど、僕たちが赤ん坊じゃないのは明らかだよ」
「もしも、彼がサポートを必要とし、アブダビ(最終戦/20日決勝)で僕がそれを提供できるのなら、僕はそこにいるつもりだよ」
「でも、もうすでにそのことについて話をして、なぜ僕が彼に抜かせなかったのかということについてすべてクリアにしたのはいいことだよ」
実際のところ、マルコもこの問題に関してはすでにチーム内で話し合われたと認めており、ホーナーによればフェルスタッペンとペレスが「握手」をしたと主張している。
■同ポイントで最終戦を迎えるペレスとルクレール
サンパウロGP前には6ポイント差でルクレールをリードしていたペレスだが、インテルラゴスでルクレールが4位、ペレスが7位となったことから、両者が290ポイントで並んで今週末の最終戦を迎えることになっている。
つまり、アブダビのヤス・マリーナ・サーキットで今週の日曜日に行われる決勝で先にチェッカーフラッグを受けた方が2022年のドライバーズランキング2位を確定することになるわけだ。
ちなみに、仮に両者がいずれもリタイア、あるいはポイント圏外でレースを終えた場合には、ここまでの優勝回数の差(ルクレール3勝、ペレス2勝)により、ルクレールのランキング2位が決定することになる。