フェラーリとアルピーヌは、先週末に行われたF1メキシコGPではメキシコの空気の薄さに苦しめられたようだ。
●【2022F1第20戦メキシコシティGP】決勝レースのタイム差、周回数、ピット回数
メキシコの首都であるメキシコシティにあるエルマノス・ロドリゲス・サーキットは標高2,238メートルに位置している。ほぼ富士山の五合目に相当する高さだけに、空気の密度も低くなり、それがF1マシンの空力効果やパワーユニット(エンジン)のパフォーマンスに大きな影響を及ぼすことになる。
■週末を通じてペース不足だったフェラーリ
金曜日に行われたフリー走行1回目こそフェラーリのカルロス・サインツとシャルル・ルクレールが1-2体制を築いたものの、その後はフェラーリのペースが上がらなかった。
フェラーリF1エンジンには他のメーカーのものと比べて格段に小さいターボチャージャーが備え付けられているが、メキシコの空気密度に合わせるために、その性能を下げなければならなかったのがその理由ではないかとの噂がエルマノス・ロドリゲス・サーキットのパドックでささやかれていた。
そして、それによるパフォーマンス低下を補うために、フェラーリはさらにダウンフォースも減らさなければならなかったものと考えられている。
■ストレートで何かが変だったとルクレール
メキシコでのレースを6位でフィニッシュしたモナコ出身ドライバーのルクレールは、フランスの放送局『Canal Plus(カナル・プリュ)』に次のように語った。
「問題があるのはほぼ間違いないよ」
「僕たちはストレートで大きくタイムを失っていた。メルセデスやレッドブルとの比較だけでなく、ストレートでは何かが変だったんだ」
「そして、コーナーの立ち上がりでスロットルを開けると、そこでも何かが変なんだ」
一方、このレースをルクレールよりもひとつ上の5位でフィニッシュしたスペイン人ドライバーのサインツは、フェラーリは「どうして速度を落とすのか、どんな妥協が必要なのかを理解している」と主張している。しかし、実際のペースは「予想以上に難しい」ものだったこともサインツは認めている。
■1分もの差をつけられた理由がわからない
メキシコGPで優勝したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)から68秒以上も遅れてチェッカーフラッグを受けたルクレールはさらに次のように続けた。
「自分たちがかなり困難な状況にあることがわかったんだ。特にエンジン面でね。1分の遅れは本当に大きいし、痛いよ」
「エンジンに関しては、僕たちが変えたいと思っていたことを変えることができなかったんだ。だけど、それでもこのギャップは説明できないよ」
■次戦ブラジルGPではサインツにグリッド降格の可能性
また、サインツのマシンのターボチャージャーは週末を通してダメージを受けたと考えられており、チーム代表を務めるマッティア・ビノットは『Sky Italia(スカイ・イタリア)』に次のように語っている。
「ブラジル(第21戦/11月13日決勝)でパワーユニット交換によりサインツにペナルティが科される可能性は否定できないよ」
「説明はできない。だが、これは分析しなくてはならないレースだ。というのも、将来のためにはこういうレースも必要だからね」
「我々はパワーユニットだけでなく、クルマにも苦しんでいる。そして、それに関する確かな答えを得られていないんだ」
■冷却問題を最優先していたアルピーヌ
一方、アルピーヌもフェラーリ同様にメキシコの薄い空気に苦しめられていたようだ。
フェルナンド・アロンソによれば、チームは「何よりも」冷却問題に取り組んでいたという。
「レースでマシンを生き残らせるために、何度も変更を加える必要があったんだ」
そう語った2005年と2006年のF1チャンピオンであるアロンソだが、決勝ではポイント圏内を走行していたものの、結局エンジントラブルに見舞われてリタイアとなってしまった。
■再びアロンソのマシンだけにトラブル
「実際のところ、今年はずっと変だったよ。ポイントを全部失ってしまったんだ」
「僕は5気筒で20周を走っていたんだ。自分をだましながらね。そして、ついに壊れてしまったし、あれが精一杯だったよ」
母国スペインの『DAZN(ダゾーン)』にそう語った41歳のアロンソは、次のように付け加えた。
「またもや、いつものように14号車だけだ。僕はずっとマシンを止めたかったんだけど、チームは奇跡的にポイント圏内に残れるかどうかを見たかったんだ」
■最終ラップまでアルピーヌを助けるつもりだとアロンソ
実際のところ、アルピーヌは現在マクラーレンとの間で激しいコンストラクターズ選手権4位争いを繰り広げている。メキシコではマクラーレンに4ポイントのばん回を許したことから、現在153ポイントで4番手に位置しているアルピーヌと146ポイントで5番手のマクラーレンとの差はわずか7ポイントに縮まってきている。
「彼らと一緒に楽しめるレースが2つ残っているし、このチームは僕のF1での歴史の中ではルノーというチームだ。そして、昨年もこのスポーツに戻る機会を与えてくれたチームなんだ」
2023年には今季限りでF1を引退するセバスチャン・ベッテルの後任としてアストンマーティンへ移籍することが決まっているアロンソはそう語ると、次のように付け加えた。
「だから、そう、最終ラップまで僕は彼らを助けるつもりだよ」。