レッドブル首脳のヘルムート・マルコや、かつてのチームメートであるマーク・ウェバーは、セバスチャン・ベッテルが今年限りでF1を引退するのは「正しい判断」だと考えている。
オーストリア出身の79歳のマルコは、レッドブルとそのセカンドチームであるアルファタウリのドライバープログラム責任者でもある。
2010年から2013年にかけて4年連続F1ドライバーズタイトルを獲得したベッテルにF1で成功するための道を整えたのもマルコだったと言っていいだろう。
だが、その後フェラーリからアストンマーティンへと渡り歩いた35歳のベッテルは、ついに2022年シーズンを最後にF1ドライバーとしてのキャリアを終えることになる。
■今のベッテルにはF1以外に優先することがある
マルコは、ベッテルの引退について『Sky Deutschland(スカイ・ドイチュランド)』に次のように語った。
「彼が辞意を表明したスピーチはとても力強いものだった」
「それは、彼の関心が今では別の方向に向いていることを示しているよ」
「もちろん、彼が競争力のあるコックピットを持っていなかったこと、そして、おそらくそれを見つけることもできなかったであろうことも考慮しなければならない。だから、私から見れば、この決断は絶対に正しいものだよ」
マルコはまた、母国オーストリアの『Osterreich(エステルライヒ)』紙に対し、ベッテルにとっての「優先順位」がF1最高レベルだと言える圧倒的強さを見せていたころとは変わってきているのだと次のように語っている。
「ベッテルの几帳面さは、我々のDNAに完璧にフィットしていた。全てが完璧に機能していたよ」
「今の彼にはほかに優先することがある。そして、彼のマシンでは表彰台に上ることさえできない。だから、彼がこのような結論を出すのは理にかなっているんだ」
「心を込めることができなければ、続けることはできないよ」
■ベッテルはF1引退を後悔しないはずだとマーク・ウェバー
また、2007年からレッドブルに所属し、そのうち2009年から自身がF1を引退する2013年までベッテルのチームメートであったマーク・ウェバーは、ベッテルが今年限りでのF1引退を決めたことは間違っていないと考えている。
「彼にとっては正しいタイミングだった。このタイミングは正解だよ。彼がそれを後悔することはないだろう」
そう語った45歳のオーストラリア出身元F1ドライバーは、ベッテルがフェラーリのシートを失ったとき、アストンマーティンに移籍したのは間違いだったと思うかと質問されると次のように答えた。
「そうかもね。だけど、僕は選手じゃないから何とも言えないよ」
「彼が(アストンマーティンと)契約したとき、おそらく彼にはまだ引退する準備ができていなかったんだろう。そのとき彼はまだ32歳だったしね」
「だから、僕は彼が何かほかのモータースポーツをしても驚かないよ」
「フォーミュラEは彼にとって完璧だと思うよ。冗談じゃなくてね」
そう語り、環境保護問題に積極的に取り組んでいる最近のベッテルにとっては環境に優しいフル電動フォーミュラカーによる世界選手権であるフォーミュラEが合うだろうと示唆したウェバーは、次のように続けた。
「だけど、彼はこれから家族と多くの時間を過ごすことになるようだし、それはすごく理解できることだ。彼は、これまでずっとやってきたことから離れてほかのことをするのがどんな感じなのかを確かめることになるんだと思うよ」
「彼は考えるための時間がある。彼は素晴らしい成功を収めた男だし、とても裕福だ。彼の目の前にはたくさんのチャンスと選択肢があるよ」
■ベッテルの後任となるアロンソにはまだ勝つ力があるとマルコ
一方、マルコは、先月末に41歳になったばかりのフェルナンド・アロンソ(現アルピーヌ)が、35歳で引退を決めたベッテルの後任として来季からアストンマーティンで走ることになったのは非常に興味深いことだと考えているようだ。
「彼はまだものすごく速い。彼にまだこれほどのことができるなんて信じられないほどだし、私にとっては今年最大のサプライズだよ」
アストンマーティンとは複数年契約を結んだと伝えられていることから、少なくとも43歳まではF1で走り続けることになるであろう現役最年長F1ドライバーのアロンソについてそう語ったマルコは、次のように付け加えた。
「私は、彼がまだドライバーとして勝利を手にすることができるとさえ思っているよ。唯一の疑問は、アストンマーティンが彼にそれができるパッケージを提供できるかどうかだね」