今年のフェラーリは、F1タイトルを狙えるマシンを手にしながらも、ミスをし続けることで自らを不利な立場に追い込んでいるようだ。
■フェラーリにとって怖いのは批判されることより笑われること
ロシアの『Match TV(マッチTV)』でF1解説者を務めるアレクセイ・ポポフは、今のフェラーリの状況は“悲劇”を通り越して“喜劇”になりつつさえあると考えている。
「彼らは2022年型マシンに全力を注ぎ込んだ。そして、彼らは成功した」
「だが、彼らにはタイトルを争う準備ができていないよ」
「フェラーリは、エンジン、戦術、ドライバーのエラーなど、すべてを悪循環させているんだ」
「そんな状態でどうやってタイトル争いができるのか、私にはわからないよ」
「そして、批判されるのはそれほど恐れることではない。だが、彼らにとって怖いのは、笑われることだよ」
そう語ったポポフは、かつてフェラーリがミハエル・シューマッハを擁して黄金時代を築いた時期にチーム代表を務めていたジャン・トッドや、当時の技術責任者ロス・ブラウン(現F1マネジングディレクター)の名前をあげながら次のように付け加えている。
「ジャン・トッドとロス・ブラウンの時代には想像すらできなかったことだ」
■フランスGPでのミスは「みぞおちへの一撃」だったとノルベルト・ハウグ
2012年シーズンまでメルセデスのモータースポーツ責任者を務めていたノルベルト・ハウグは、母国ドイツのテレビ局『Sport1(シュポルト1)』に対し、先週末にポール・リカール・サーキットで行われた今季のF1第12戦フランスGP決勝でフェラーリのシャルル・ルクレールがおかしたミスは、今季の残りレースがあと10レースとなった今、フェラーリにとっては「みぞおちへのパンチ」だったと表現し、次のように続けている。
「これからルクレールが10勝したとしても、それでも彼はタイトルを獲得することができないかもしれないんだ。それは、今の彼がいかに厳しい状況にあるのかを示しているよ」
「なぜなら、10戦すべてでフェルスタッペンに自力で勝つことは、非常に難しいだろうからね」
そう語った69歳のハウグは、救いはフェラーリのチーム代表を務めるマッティア・ビノットが冷静さを失っていないことだと、次のように付け加えている。
「幸いなことに、マッティア・ビノットは冷静で穏やかだ。彼が冷静さを失わないというのは本当にすごいことだよ。私は、それはすごくいい資質だと思っている」
■フランスGPでのミスは「みぞおちへの一撃」だったとノルベルト・ハウグ
今週末にブダペストのハンガロリンクで開催される第13戦ハンガリーGP(31日決勝)を含め、2022年に残されたF1レースはあと10戦となっている。そして、現時点でランキングトップに位置しているマックス・フェルスタッペン(レッドブル)と2番手につけているフェラーリのルクレールの差は63ポイントだ。
ハウグが指摘したように、仮にルクレールが残りの10戦すべてで優勝したとしても、フェルスタッペンがすべてのレースで2位となり、さらにファステストポイントなどのボーナスポイントを加えれば、ルクレールがポイントを逆転できない可能性もある。
今季序盤に起こったように、レッドブルF1マシンになんらかのトラブルが発生するなどして複数のレースでフェルスタッペンがリタイアするような事態となれば形勢逆転もありえるだろうが、そうでもない限り、フェラーリ、そしてルクレールが今後非常に厳しいレースを強いられるのは間違いないだろう。