これまでとは大きく異なる新たな技術レギュレーションが導入され、ホイールサイズもこれまでの13インチから18インチへと変わることで2022年のF1マシンの外観はこれまでとは大きく変わることになる。
一方、現時点においては、各チームのドライバーラインアップに関してはそれほど大きな変化は生じないのではないかとの見方が強くなってきているようだ。
だが、最大の注目を集めているのは、来季メルセデスで誰がルイス・ハミルトンのチームメートを務めることになるかということだろう。
現F1チャンピオンであるハミルトンは2017年からコンビを組んできたフィンランド出身ドライバーのバルテリ・ボッタスの続投を希望していると伝えられているが、メルセデスでは自分たちの育成ドライバーであり、現在はウィリアムズで走っているジョージ・ラッセルを昇格させる可能性が高いと考えられている。
もし、メルセデスが2022年もボッタスをキープすることになれば、ラッセルは来季もウィリアムズで走ることになるのはほぼ間違いないだろう。
だが、仮にメルセデスがラッセルを昇格させることにした場合には、ボッタスの来季の去就や、誰がラッセルの後任としてウィリアムズで走ることになるのかに注目が集まってくるのは間違いないだろう。
現在、ウィリアムズではラッセルとカナダ人ドライバーのニコラス・ラティフィが組んでいるが、ラティフィが巨額のスポンサーマネーを持ち込んでいることから、2022年もラティフィがシートをキープするのは確実だと考えられている。
問題はラッセルがメルセデスに移籍することになった場合の後任ドライバーだ。ウィリアムズのチームCEOを務めるヨースト・カピートは来季もラッセルをキープするのが第一の希望だとしつつ、仮にメルセデスがラッセルを昇格させるのであれば、それを支援すると発言している。
その背景には、すでにラッセルの後任候補者リストには多くのドライバーの名前が記されているものと考えられており、現時点では次の6人に2022年にウィリアムズのシートを獲得する可能性があるのではないかと噂されている。
■候補1:バルテリ・ボッタス
ラッセルのメルセデス昇格が決まった場合、これまでの報道によればボッタスが入れ替わりにウィリアムズに復帰する可能性が高いと考えられている。
2013年にウィリアムズでF1デビューを飾ったボッタスは2016年まで同チームで活躍していたという経緯がある。ボッタスは2016年にF1チャンピオンとなったニコ・ロズベルグが突然引退を決めたことから、その後任として2017年にメルセデスのシートを獲得していた。
メルセデスF1チームを率いるトト・ヴォルフ(チームCEO)はかつてボッタスのマネジメントチームの一員だったこともあり、仮に2022年にボッタスをはずすことになった場合にはその後のことについて面倒を見るつもりだとコメントしている。メルセデスエンジンを搭載するウィリアムズにボッタスを復帰させるのはヴォルフにとってはさほど困難なことではないと考えられている。
■候補2:ニコ・ヒュルケンベルグ
2010年にウィリアムズでF1デビューを飾ったニコ・ヒュルケンベルグは、その後フォース・インディア、ザウバー、ルノーなどで活躍したが2020年のシートを確保することができず、今季はアストンマーティンのリザーブドライバーを務めている。
だが、ヒュルケンベルグは2020年にはレーシングポイントと呼ばれていたこのチームから新型コロナウイルスに感染したドライバーの代役として3レースに出走しており、“スーパーサブ”とも呼ばれる活躍を見せていた。
表彰台には上ったことはないものの、これまでF1で180戦以上を戦ってきたという経験が大きな強みとなるドイツ出身のヒュルケンベルグだが、即戦力としては期待できるものの、33歳という年齢がネックとなる可能性は否めないだろう。
■候補3:ダニール・クビアト
レッドブルの育成ドライバーとして2014年にトロロッソ(現アルファタウリ)からF1デビューしたロシア人ドライバーのクビアトは、その翌年にレッドブルに昇格するも、その後トロロッソに降格され、一時は完全にレッドブルとの関係が切れてしまった。
しかし、クビアトは2019年には再びトロロッソのドライバーに返り咲き、アルファタウリとチーム名が変わった2020年も同チームのドライバーを務めていた。
だが、チームメートのピエール・ガスリーとの差も大きく、2021年には日本人ドライバーの角田裕毅にシートを明け渡し、現在はアルピーヌのリザーブドライバーを務めている。
■候補4:アレクサンダー・アルボン
2019年にトロロッソでF1デビューを飾ったタイ国籍ドライバーのアルボンは、シーズン後半にはピエール・ガスリーと入れ替わりにレッドブルに昇格。そして2020年もレッドブルでフルシーズンを戦っている。
だが、2019年のガスリー同様、マックス・フェルスタッペンとのパフォーマンス差が大きかったこともあり、2021年は前年までレーシングポイントで走っていたメキシコ人ドライバーのセルジオ・ペレスにそのシートを明け渡してしまった。
2021年はレッドブルのリザーブドライバーを務める傍らDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)にも参戦しているアルボンだが、最近レッドブル首脳のヘルムート・マルコが、2022年に向けてレンタル移籍のような形でほかのチームのシートを獲得できないかどうか検討していることを示唆している。
アルボンに関しては、DTMではフェラーリのマシンで戦っていることもあり、そのパイプを使ってフェラーリエンジンを搭載するアルファロメオのシート獲得を検討しているとの噂もあるが、マネジメントチームはウィリアムズにも売り込みをかけているものと考えられているようだ。
■候補5:周冠宇(チョー・ガンユー)
2019年からF2選手権に参戦している中国人ドライバーの周だが、3年目の今年は現時点でランキング2番手につけるパフォーマンスを見せている。
現在、周とテストドライバー契約を結んでいるアルピーヌではその実力を高く評価しており、経験を積ませるためにほかのF1チームのシートを確保したいと考えているようだ。
現在ルノーエンジンを搭載しているのは自分たちのワークスチームであるアルピーヌだけとなっているルノーは、今後に向けてエンジン供給チームを増やしたいと望んでいる。そして、現在メルセデスエンジンを搭載しているウィリアムズに対してエンジン供給をオファーしていると考えられている。
■候補6:ニック・デ・フリース
2019年のF2チャンピオンであり、現在はメルセデスF1チームのリザーブドライバーのひとりに名前を連ねる傍ら、メルセデスのワークスチームからフォーミュラEに参戦しているオランダ人ドライバーのニック・デ・フリースにもウィリアムズのシートを獲得するチャンスがあると考えられているようだ。
現時点では今季のフォーミュラEのポイントリーダーとなっている26歳のデ・フリースは、2020年末に行われたF1の若手ドライバーテストにもメルセデスから参加しており、メルセデスとしてもラッセルや現在アルピーヌに所属しているエステバン・オコン同様に2022年にF1で経験を積むチャンスを与えたいと考えているようだ。
ともあれ、これらのドライバーにウィリアムズのシート獲得のチャンスが生まれるかどうかは、メルセデスの2022年のドライバーラインアップがどうなるかにかかってくるのは間違いない。