F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)の会長を務めるジャン・トッドは、2021年のF1タイトルを争うルイス・ハミルトン(メルセデス)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)の間に発生したクラッシュはレースの一部でしかなかったと考えている。
今季のF1第10戦イギリスGP決勝において、シルバーストン・サーキットの有名な高速コーナーであるコプスにおいてハミルトンにぶつけられたフェルスタッペンがそのままタイヤバリアに激突。この際、フェルスタッペンは51Gもの衝撃を受け、病院で一夜を過ごす事態となっていた。
レッドブルの首脳陣は、アクセル全開で駆け抜ける高速サーキットでフェルスタッペンに追い抜きをしかけたハミルトンの行為は危険極まるものだったとして強く抗議していた。
トッドは、ドイツの『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』に、イギリスGP決勝後にレッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーと直接言葉を交わしていたのだと明かしている。
「私はクリスチャン・ホーナーにこう伝えたんだ。彼のドライバーに起こったことは残念だが、それがレースなのだとね」
そう語ったトッドは次のように付け加えた。
「人々は時々フェルスタッペンが最速コーナーでクラッシュしたことを忘れてしまうものだし、もし翌日にレースがあったならば、彼は走っていたと思うよ」
とは言え、F1関係者の中には、今後フェルスタッペンとハミルトンとのライバル関係がさらにヒートアップし、かつてアイルトン・セナとアラン・プロストが繰り広げたような熾烈な争いへとつながっていくのではないかと考えている者も少なくないようだ。
だが、かつてフェラーリのチーム代表としてミハエル・シューマッハとともにフェラーリ黄金時代を築いた実績を持つ75歳のトッドは次のように主張した。
「2つのチームと2人のドライバーが競い合っていることを喜ぶべきだよ」
「ファンにとっては、4人のドライバーによって争われることの方がさらに望ましいと思うが、それでも1つのチームだけが前にいる状況よりは好ましいよ」
「このような野心と緊張感があるのは、このスポーツにとってもよいことなんだ」