ハースF1のチーム代表を務めるギュンター・シュタイナーが、F1アゼルバイジャンGP決勝最終ラップでチームメートのミック・シューマッハに対して危険な幅寄せ行為を行ったニキータ・マゼピンに遡及的にペナルティが科されることはないと断言した。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)のタイヤバーストによるクラッシュでレース終盤に赤旗中断となったアゼルバイジャンGPは、最後に残り2周でのスプリントレースが行われるという珍しい展開となった。
赤旗が解除されて51周で争われるレースが50週目にリスタートしたとき、マゼピンがシューマッハを追い抜いて前に出た。その後もシューマッハの攻撃をしのいでいたマゼピンだったが、ファイナルラップで最後のストレートに入ったときにシューマッハがスリップストリームを利用してマゼピンを追い抜きにかかると一瞬その進路を塞ぐように幅寄せ行為を行っていた。
その際、シューマッハは無線を通じて「彼は僕を殺すつもりなのか!」と叫んでいた。
そのマゼピンの行為には批判の声があがり、FIA(F1統括団体の国際自動車連盟)のF1レースディレクターであるマイケル・マシの元にはペナルティを科すべきではないかとの問い合わせが行われていた。
その際、マシは自分はその様子を見ていなかったために、あとでチェックして必要があればハースとマゼピンに話をするつもりだと答えていた。
こうした状況を受け、メディアの中にはマゼピンには遡及的ペナルティが科される可能性が高いとし、1レースの出走禁止処分すらあり得るだろうと報じたものもあった。
だが、このほどドイツのテレビ局『RTL』からマシの調査はどうなったのかと質問されたシュタイナーは次のように語った。
「彼がどう話すつもりなのかは私には分からない」
「だが、彼は私が言っていることと同じことを話すだけだと思うよ。彼ら2人と話をすれば、どうしてそうなったかが明らかになるだろうからね」
「それで終わりさ。遡及的ペナルティなどないよ。彼は2人に因果関係を説明し、少年たちの話を聞くだけさ」
「私も2人と話をしたよ。ああいうことが起きれば、本当にまずいことになってしまうものだからね。全て解決したよ」
しかし、日頃温厚で知られるシューマッハが怒りを爆発させていたことを考えれば、今後2人の関係がこじれるのは間違いないだろうと考えている者もいる。
だがシュタイナーは、時速300キロメートル以上で走行しているときにあのようなことが起きればシューマッハが怒って叫ぶのは当然のことだったと語り、次のように続けた。
「しかし彼はニキータの話に耳を傾けたし、それを尊重していたよ。今では彼もその怒りを静めることができていると思う」
「ニキータはそのときのビデオを見るまでは、そういう状況ではなかったと考えていた。だが、それは誤った判断だったことが分かったんだ」
「それが理解できたならば、あとはもう忘れることだ。どこかの時点で『我々はそれについて話をし、誤解は解けた』と言わなくてはならない」
「ミックにも感情があることを忘れてはいけないし、こういうときにこそ感情が出るものなんだ」
「しかし、彼は非常にプロ意識が高く、とてもクリーンで、22歳にしてはすごく大人だよ」
そう述べたシュタイナーは次のように付け加えた。
「結局のところ、私はあれは非常に危険なものではなかったと思っている。ただ、高速だったがゆえに感情的になってしまったんだ」