F1レースディレクターのマイケル・マシが、先週末に行われたF1アゼルバイジャンGP決勝が残り3周のところから再開されたのは手順的に全く正しいことだったと主張した。
●【F1第6戦アゼルバイジャンGP】決勝レースのタイム差、周回数、ピット回数
バクー市街地サーキットで行われたアゼルバイジャンGPだが、決勝では3番グリッドからスタートしたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が先頭でレースを引っ張る形となっていた。
だが、51周で争われるレースが残り5周に入ろうとしたところでフェルスタッペンの左リアタイヤがバーストしホームストレート上でクラッシュしてしまった。
ここでセーフティカーが導入されたものの、コース上にフェルスタッペンのマシンの破片が散らばっていたことや、レース中盤にもランス・ストロール(アストンマーティン)のタイヤに同じようなトラブルが発生していたこともあり、統括団体であるFIA(国際自動車連盟)のレーススチュワードは残り3周となるところで赤旗を出し、レースを中断した。
F1関係者の中には、その時点でレースはすでに有効に成立するだけの周回を消化していたこともあり、そこでレースを終わらせるべきではないかと考えた者もいたようだ。
しかし、そうしたアナウンスがないまま、F1チームたちはピットロードに戻ってきたマシンのタイヤやパーツを交換し、レース再開に備えることなった。
現在のルールでは赤旗中断からレースを再開する場合には1周のフォーメーションラップを行い、通常のレーススタート時と同じように各マシンがそのときの順位でグリッドにつくというスタンディングスタート方式がとられることになる。この場合フォーメーションラップも周回数に数えられるため、レースは事実上2周で争われることになったわけだ。
このレースで最終的に3位表彰台に上ったピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)は、実際に残り3周でレースが再開されると分かったときにもそれほど驚きはなかったと次のように語った。
「アメリカ人が(F1を)買収したわけだし、エンターテインメント優先であることにそれほど驚きはしなかったよ」
ガスリーが指摘したように、F1は2017年シーズンからは新オーナーとなったアメリカのリバティ・メディアによって運営されてきている。それにより、以前よりもエンターテインメント志向が強くなってきていると考えられている。
だが、ガスリーは今回のアゼルバイジャンGPで最後に2周の超スプリントレースになったのは悪いことではなかったと次のように付け加えた。
「すごくハードだったのは事実だけど、僕は本当に楽しめたよ。どちらかと言えば、今後も同じようにやってくれるといいと思うよ」
このレースで優勝を飾ったセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)も、赤旗中断からのレース再開判断に「一貫性」があれば、ガスリーと同じように今後も同じようにやってもいいと思うと語り、次のように付け加えた。
「そうすればファンをテレビの前に釘付けにできるのは確かだからね」
しかし、このレースで2位となったセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)は、F1ではエンターテインメント要素だけで決定がなされることが「ますます多くなっている」と感じているようだ。
レッドブル時代に2010年から4年連続F1チャンピオンとなった実績を持つベッテルは次のように語った。
「このスポーツのルーツを失わないために、作為的になりすぎないように気をつける必要はあると僕は思うよ」
一方、マクラーレンのチーム代表を務めるアンドレアス・ザイドルは、今回のリスタート判断は正しいものだったと次のように語っている。
「残り周回数があと2周でも10周でも、あるいは20周でも、それは関係ないよ。リスタートは普通かなり安全だし、実際に2周の面白いレースが見られたわけだしね」
「スタンディングでのリスタートも、エンターテインメントの観点からは正しい判断だった。そのことには何の問題もないよ」
「全員がタイヤを交換したわけだから、安全性のリスクはなかったしね」
こうした中、急逝したチャーリー・ホワイティングの後任として2019年シーズンからF1レースディレクターを務めているマシは今回の判断について次のように語った。
「レギュレーションには、状況的に許される場合にレースを再開することができないというような規則はないんだ。そしてあの赤旗でレースを終了させる理由は何もなかったよ」